長編
□兄弟は手足たり
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劉輝はふと目が覚めてしまったため、少し外に出て夜風にあたっていた。庭院をぼーっと眺めながら昔のことを思い出してた。
『劉輝…また此処にいた』
『あ…にうえ?』
私が他の兄達に折檻されて、ひとりぽっちでいると清苑兄上はいつも私を探し見つけてくれた。
私をかばい、優しく薬を塗ってくれた。
『兄上はどうしていつも私の居場所が分かるのですか?』
『なんとなく…分かるんだよ』
そう言って優しく微笑んだ兄上…兄上だけが私の支えだった。
でも、私は突然いなくなった兄上を見つけることはできなかった。兄上を探すために王宮を出ようとした。その時には既に残った公子は私一人で…王位についた。
王という地位が私の望みを邪魔した。
今も王という地位が兄上との間に壁を作る。
もう兄上は以前のように“劉輝”とは呼んでくれない。“兄上”と呼ばせてくれない。
『私は、清苑公子などでは、ありませんよ』
何故私が王に?
兄上の方が王にふさわしい。そんな兄上の側に居れるだけで良かったのに…
「兄上…」
分かっている。
これは私の我が儘だ。
今は私にも“静蘭”にも居場所があるのだから。
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