喧嘩人形
□借金取りととある少女の1週間
1ページ/1ページ
Thursday
『お邪魔します!』
「悪いけど頼む。」
静雄さんのお家にお邪魔することになりました。理由は「ゴミ分別とかよくわかんねぇから」だそうです。あとはまぁ私が口煩く言ったため「作れんなら夕飯も作ってくれればコンビニで済ませねぇよ」ということ。
なんだか、
『通い妻?』
「ブフッ」
私の独り言に水を飲んでいた静雄さんは口に含んだ水を盛大に吹いてしまった。
「な、なんか違うだろ…!」
『そうですよね、静雄さんと結婚してるわけじゃないですもんねぇ。』
「そういう問題とも違う気がするんだけどな…。」
静雄さんがぶつぶつ何か言っているけど、気にせずに部屋を見渡してみる。
静雄さんが言うほど汚くはなく、むしろ男の一人暮らしにしては綺麗すぎると思う。兄さんの部屋に行ったときなんかゴミはその辺にあるし服は散らばってるしで酷かった。
『エロ本がその辺に落ちてないんだから全然綺麗だよなぁ。何に使ったか丸分かりなガチガチのティッシュもないしさぁ。兄さんが健全なのはいいけどさぁ。』
「……あったとしてもそれぐらい片付けるだろ。」
『妹が来ると予告しても片付けない兄がいるもので。』
分別を微妙に間違っているゴミを正しく分別しながらそれを見て覚えようとしているらしい静雄さんと話す。
コンビニ弁当とかカップ麺のゴミばっかりだ。
『静雄さん、こんな食生活しててタバコ吸ってたらあっさり死んじゃいますよ。』
「それは困るな。ノミ蟲より早く死ぬわけにはいかねぇ。」
真剣な表情でそう言うと「タバコを控えるか…?」と口に出して考え出す静雄さん。食生活を改める気はまったくなさそうです。
『静雄さん、静雄さんって家にテレビ置いてないんですか?』
お邪魔した時からあった違和感。正体はどの家にも必ずと言っていいほどあるテレビがないというもの。
「あぁ、最初はあったんだがニュース見てイライラしてぶっ壊してから買ってねぇ。」
『とても世の中に疎くなりそうですね。』
「俺の周りのことがわかれば問題ねぇ。それに時たまそういうのをペラペラしゃべりに来るクソ野郎がいるしな。」
『あぁ、例の方ですか…。』
ここ数日でイザヤさんの名前が出なくてもなんとなく雰囲気でわかってしまうようになった。何かにつけてわりとイザヤさんが出るので。
「ないとは思うがアイツとは絶対関わるなよ。」
『はい。』
口を酸っぱくして言う親みたいな感じだ…。
ちょっと頭は可笑しい感じしたけど絶対に関わってはならないって程ではなかった気がするんだけどな。
『静雄さん、』
「なんだ?」
『夕飯は何がいいのでしょう?』
「……和食、とか手間だよな。」
難しい顔でポツリと呟く静雄さん。まぁ確かに手間なものは手間だけど、
『大丈夫ですよ?』
「面倒じゃねぇか?」
『肉じゃがとかぐらいならそんな手間じゃないですから!材料、買いに行きましょう!』
「え、お、まっ」
冷蔵庫の中がビールと水で埋まってるのを確認して、静雄さんの手をグイグイ引っ張る。
静雄さんに美味しいと言わせてみせるっ
続く