The Dollish Cry
□第一話
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目覚めというものは何時だって唐突で、
意図して起こすわけでもなく瞬間を留めることもできない、
実は曖昧だが確実に発生している事象である。
「私は」
足、手、眼、髪、
感覚のあろうはずもないものまで、
全てから感じるそれは冷たさ。
ひっそりと静まり返った静寂に、
ひたひたと忍び寄る気配。
「待って」
まだ、待って。
だって、私はまだ。
「目覚めたくない」
この夢から。
甘美な世界。
喪うことが、
恐ろしくて。
ひたすらに乞うた。ただ乞うた。
しかし目覚めがそうであるよう、伴ってそれもまた刹那。
乞うても乞うても、永遠の時を過ごすかのように
それは届くことなく繰り返されるまま。
ねえ、お願いだから。
私はまだ此処に居たいんだ。
お願いだから――
そして彼女は暗い瞳を開いた。