★★★

□さらってみせてよ
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「なぁ、遊び行こうぜ」


「はい?」




朝の冷えた空気を吸い込んだ矢先、隣で顔を洗い終わった綱海さんがまたとんでもない事を言い出した。
もちろん今日は休日などであるはずがなく、あと数時間もすれば練習が始まる立派な平日だ。
(何考えてるんだこの人は!)
いつもいつも綱海さんの突拍子ない発言には驚かされてばかりいるが、今日ほど息を詰まらせた日も珍しい。

「今日も9時半から練習ありますよ?」

よもや忘れたわけではあるまいと、訝しげに問いかける。
寝惚けているなら水でもかけてやろうかなんて、思った事は彼には内緒だ。

「ばっか、練習はこっそり抜け出すに決まってンだろ?」


逆に呆れた口調で返され、此方が間違っている気にさえさせられる。
(この有無を言わせない感に弱いんだ)
どうせ俺が断ろうと手をひいて連行されるんだろう、なんて事を考えながら俺は軽くため息をついた。


「確かに今は試合を控えてる訳じゃないですけど…でも練習サボるなんて…」
「たまには気分転換しねぇと潰れるぞ?」
「大きなお世話ですっ!…そりゃあ、何か特別な理由があるならまだしも…」


例え綱海さんが許しても、俺の良心が許さない。
手元のタオルを握り締めながら、困ったように言葉を濁らせ、ようやく起き出して来たらしい円堂さん達に聞こえないように、普段より幾分か小さい声で呟いた。
隣で少し思案するように間をあけた綱海さんは、二、三度唸るように声を漏らしてこう言った。


「…久しぶりに勇気とデート、したかったんだけどなぁ」



酷く残念そうに目を伏せた綱海さんは、ご丁寧にもちらりとこちらの様子を伺ってみせる。
計画的な犯行とでも言うべきか、俺だって、と口をついて出掛けた言葉をすんでの所で飲み込んだ。

「…っ、…そもそも練習サボったりなんかしたら監督に雷落とされちゃいますっ!」

どうにかして綱海さんを諦めさせようとそれらしい理由を述べてみたけれど、綱海さんの意思は変わらなかった。
(全く頑固なんだから…!)
俺もしばしば頑固と表される事があるくせに、自分の事は棚にあげて眉根を寄せた。


「いざとなったら一緒に怒られてやっから、さ!」

代わりに、と言わない辺りが彼らしい。
こうなったらもうテコでも譲らない事を知っていても、なお付き合いを続ける俺は相当なお人好しか。

(いや、惚れた弱味…かなぁ…)

どれだけ突拍子が無かろうと、どれだけ強引に手を引かれようと離れないのは俺の意思。


(そういう所も含めて大好きなんだからしょうがない)


ようやく決意を固めた俺は、此方を伺う綱海さんに手を差しのべて悪戯っぽく笑ってみせた。





「そこまで言うなら、」












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(共犯者は御免ですから!)









**In front of goalnet(FOG)様へ寄稿させて頂きました^^*


**使用させて頂いたお題

さらってみせてよ



**アトガキ**

ちょっと補足をするならば^^!←
『共犯者は〜』の件については、「綱海さんが無理やり」って事を建前に遊びに付き合うって事でww
でも監督は皆に平等に厳しいので、いくらゆうきゃんがつなみんに引っ張られて遊びに行ったのだとしても二人とも怒られるフラグです(笑)
きっと後で二人して正座とかさせられるよ^ω^←←
そこまで含めて微笑ましく読んで頂ければ幸いです。
ここまで見て頂いて有難う御座いました(七^q^)++



0.99999999999@なな


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