ているず

□星の行く末
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「シングッ」
ヒスイがシングの肩を掴む。リンクアウトしてシングの外に出てきた瞬間だった。いつの間にかテクタの家にやって来ていた3人は、その姿に驚きを隠さない。
「お前、俺達に何を隠してやがる…!!」
「ヒスイ、止めろ」
スピルーンを失くしたシングでも、痛みは感じるらしい。シングが痛そうに顔を歪めたのを見て、カルセドニーがヒスイをシングから剥がした。
「テメェ…何でこんなことになってんのか、説明ぐらいしねぇのか!!」
「………」
「…何か話せよ、シングッ!」
怒鳴っているヒスイにはわからなかったのかもしれない。ヒスイとシングの間に入っていたカルセドニーには、シングが一瞬だけ、――それこそ見間違いかと疑うほど一瞬辛そうに顔を歪めたのが見えた。
「ヒスイ、落ち着きなさい。それ以上怒鳴っていると、シングの本能によって痛い目を見るわよ」
ヒスイとコハクがシングのスピリアに入り、シングのスピルーン全てが失われてしまったことが分かった。スピリアの中で、スピルーンを投影したシングに会えなかったから。
先の旅でコハクが似たようなことに遭った際はコハクの中には優しさのスピリアが残っていたから、スピルーン全てが失くなるとどうなるかがわからなかったのだ。ラピスがストリーガウによってスピルーンを無理矢理盗まれると、時が止まり眠り続けていたこと以外は。
「想像できるでしょう。スピルーンを失くすと、ラピスのように眠り続けてしまうか、…起きて動けていても防衛本能によって敵対する者を無作為に排除してしまうようになるか」
本能という命令に縛られる、機械人形のように。
「スピルーンが失くなって感情を表に出すことがなくなっても、シングの中に“記憶”は残ってる。記憶は残っても、感情がない限り彼に元の仲間意識は戻らないわ。記憶によって抑制されていても、本能で危険と判断されたら、終わり」
イネスが話しているのは単にイネスの考え出した仮説にすぎない。ただ、十分に考えられることだということはヒスイにもわかる。
ヒスイは泣き出したくなった。
ぐ、と奥歯を噛み締めて、ヒスイは下を向く。するとコハクが思い出したように、シングに話しかけた。
「シング、君の中にスピルーンの欠片があるはず…」
「……欠片?…わかんない…」
本物のシングが話したのを、初めて見た気がした。ヒスイが思わず顔を上げる。
「…オレのスピルメイズで無くなっちゃったかも……」
「シング!?」
今度は、カルセドニーがシングの肩を掴んだ。口を開いたはいいが、シングが本能で重要と判断したこと以外は話さないようで、カルセドニーは項垂れる。
「ヒスイ」
名を呼ばれたことに驚いて、ヒスイの肩が思わず跳ねた。
「オレの…スピリアを見た?」
「あぁ」
「…どう、なってた?」
ヒスイが初めて見た興味だった。本当は興味ではなくて、必然的な質問だったのだけど。
「…白化してるようだったぜ」
その言葉に、コハクと聞いた本人以外が驚く。
「白化!?」
「………」
ここまで、シングが表情を変えたのはただ一度。表情豊かなシングが自分達に口を開き始めても全く変わらない姿を見て、ヒスイはあれが夢ではなかったことを確信した。
「スピリアが白化するなんて…シング、そのうち体が白化しちゃうんじゃあ…!」
「それはないわよ、ベリル。シングのスピリアがゼロムに侵されているわけでも、ガルデニアに吸われているわけでもないんだから」
「でも、早くスピルーンを戻さなくてはならないことは確かのようですね」
テクタが急かすように告げた言葉に、シングは首を振った。
「……オレのスピルーンは、…もう、戻らないよ」
ヒスイとコハクがシングのスピリアの中で誰かに告げられたことだった。
「ヒスイとコハクは、会った?」
「会ったって…」

「……フラーレン」

シングに似ていた、スピリアの中のシング。
「…彼に出会っていたら、オレのスピルーンが戻らないことは聞いたでしょ?」
「聞いたけどよ…」
何が何だかわからない。ヒスイはそんな顔をしていた。
「ちょっと待って、シング」
コハクがシングとヒスイの話を止める。
「何で、そんなに話せるの?シングのこと…」
コハクは自身に経験があることだから、わかるのだろう。スピルーンがある程度コハクの中に戻ってくるまで、コハクが口を開くことはなかった。感情が、スピルーンが失くなっても話すことが出来るのは彼女は重々承知だ。しかし、全てに感動も嘆きもない状態では、ただ大人しくなるだけ。
先程は話せと掴みかかったヒスイだったが、シングが話し始めると頭が混乱するようで。
「…ずっと決めてたことだっていうのは覚えてるんだ。謝らなくちゃならないこと…」
だから、と。
シングは一つ拍を置いて。
「……ごめん。」
無表情なまま、シングはヒスイに頭を下げた。
少年だからかシングの性格からか、シングは負けず嫌いで意地っ張りだった。喧嘩してヒスイに対して謝るのも、イネスやコハクに懇々と諭されてからのことで。すんなり謝ったシングにヒスイは目を開き。
「…いい加減にしろよ!!!!」
怖い、という表情も作らずヒスイの腕の動きを見ただけのシング。思わず振り上げた手を止めて、ヒスイは一つ舌打ちをして、近くにあったテーブルへとその拳を降り下げた。
「オレのこと、放っといて」
ヒスイの体がグラリと揺れた。











「今のコ〇ットは防衛本能によって敵を殺戮する兵器のようなものよ」byリフ〇ル先生
/(^O^)\オイ





















































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