時少。

□24
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え、しばらく一緒ってマジ?


蛍と流架がまだ効力が続く、というので騒然としているが、朔那は自分と棗の効力もまだ切れないということに首を傾げた。

「え、朔那らも離れねーの!?」

『おかしいわね。くっつくのが遅かったにしても離れる様子もないなんて。蜜柑と棗はどう?』

「や、ちが…これは棗が…」

「離れねえ」

蜜柑の言葉を遮って棗が言うが、後ろの蜜柑が何故か叫んだ。

『(おおう…容赦ないなぁ…)』

棗が、掴んでいる蜜柑の手首を力をいれて握っているのだ。
そして口を開こうとする蜜柑を一睨み。
正に蛇に睨まれた蛙である。
それにしても、と一向に離れる気配のない磁力に頭を巡らせる。

『こんなに粉と相性よかったっけ…?』

「前やったときはすぐ離れたよなあ?」

『ああ、だいぶ前に翼が入れて殿とくっついたやつね』

思い出を馳せる朔那に棗と流架は聞いてないと驚いた様子で詰め寄った。
二人が来る前だからそれはそうだとケロッと話す朔那に思わず黙ってしまった。

『………ねえ、翼?私にくれたあのきな粉』

「えっ!?」

ふ、と思い出して口に出してみると、過剰な反応を示した。

『パシリになるのとマリオネットになるのはどちらがいいかしら選ばせてあげる』

威圧感たっぷりに翼に立ちふさがる朔那の周辺にはマリオネットのアリスであろう糸がキラキラと光りで反射しており冗談でないことが伺えた。
すぐさま土下座でパシリを選んだ翼は美咲に怒られている。

曰く、朔那に渡したきな粉は、本来もっちもち粉と併用して使うもので、持続効果を高めるためのものらしい。
そのためもっちもち粉で作られた餅にまぶせられた持続効果を高めるきな粉を食べた棗と朔那の効力がまだ切れないというわけだ。

「それにしてもまいったなー、招待者がこの状態のままで、明日の花園会、無事出席できるのかな?」

『「そりゃ無理でしょ」』

朔那と鳴海の重なった声が翼の胸に突き刺さった。

中等部校長は招待してもない人間の同伴など許さない、それも男子禁制の花姫殿にだ。

『面白いことがお好きな方だけど、男は特に毛嫌いしているのよ。よほどのことがない限り、あの花園に男を立ち入れるなんて有り得ないわね』

朔那が続けると、蛍の据わった目が翼を睨む。
身を縮こませ、美咲に寄るが一刀両断された。

『もっちもっち粉って、ひっぱれば少しは離れるのよね?』

「でもひっぱる力がなくなれば、すぐ磁石のN極、S極みたいに元に戻ってしまう」

蛍と流架を実験にひっぱるが、すぐに背中合わせに戻ってしまった。

「フロは二〜三日我慢するとして…着替えはカーテン越しとかなら何とかなりそうだし、問題はトイレと寝るときだな」

『「「え」」』

「や、だってほらそうじゃん?
こんだけ強いひっつき力で引っ張られてたら、さすがにトイレでもドア越しってわけにもいかねーだろうし」

翼のもっともな解説に、朔那は頭を抱えて溜息をついた。


::::::


『(……これはひどい)』

そう思う理由は、現在私の横で起こっている。蜜柑がトイレに入る際、棗の手が繋がっているためドアを少し開けることになるのだ。

「手はなして手はなして手はなしてってばバカーーーっ!!!」

「うっせぇ!てめーがもれるっつーからつきあってやってんだろっ!」

喧嘩する二人を…てゆうか蜜柑を可哀想にみつめるみんな。
野乃子ちゃんとアンナちゃんなんて目に涙溜めてるし。確かに可哀想過ぎる。

「ちったあ黙ってろ!覗かれてーのか!」

「ギャーーッ!」

『もういいからさっさと済ます!棗も覗かない!』

こんな三人に引き換え、蛍、流架、陽一の三人は優雅にお茶を飲んでいる。
セントラルタウンにて闇購入していた秘密兵器を使用したのだった。
ちなみに朔那も持っている。

「キライやー!棗なんか大嫌いやー!」

「あの後三回トイレに行く女なんて俺だってゴメンだ」

「誰のせいやと思てんねんコラーっっ!」

『(……疲れた)』

テーブルに星階級別の夕食をとっている。
蜜柑は先程のこともあり泣き、棗はうんざりとした様子だ
何より棗と隣どうしに座っている朔那が一番うんざりとしていた。

「大丈夫?佐倉、朔那も…」

『ええ…まあ…』

ぐったりとしている朔那と、泣き叫んでいる蜜柑を心配する流架に、蜜柑は優しい流架のほうがよかったと思う。
それは心の中にとどめているのだが、心を読むやつが一人いることを忘れている。3
気まずい空気が流れる中、棗の横に座る朔那だけはまだ見ぬ未来に想いを馳せていた。




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