夏色

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もしも"夏色モノローグ夢主"が年上だったら---。









「蜜弥!今日もお願いね!」

『朝から元気だな、お前』



朝日が昇り始めた頃、まだ霞がかっている時間帯に俺は懐かしのグラウンドに立っている。

まだ五時だ。AMのな。

そんな朝っぱらから元気な声に元気な笑顔の女、百枝まりあ。
高校時代の同級生で、現在は母校である西浦高校野球部の監督なんかをしている。



『(ふ……ここに来たのが運のツキだったな)』



散歩と称して久しぶりにここまで足を伸ばしてみれば、これはまた久しぶりに会った百枝に野球部のコーチに!と勧誘され無理矢理強制問答無用でやらされる羽目に。



『ねむ…』

「はよーございます!」

『おー、来たか。んじゃ、いつも通り瞑想やってアップからな』



まあ、俺もこれで生計たててる訳じゃないし、むしろ無償のボランティアだ。

だから時間があるときは仕事をしている。

親の仕事手伝ってるだけだけど。



「なあ、コーチって何の仕事してんの?」

「大手企業だって。母親が言ってた」

「すげー、まあコーチだけじゃ金にならないよね」

『口を動かす前に体を動かせ、花井、泉、水谷!』



名指しで咎めると慌てて動き出した三人。
息を吐いて眺めていると、百枝が近寄ってきた。



「みんな気になってるみたいだね」

『いきなりコーチですって言われたらそりゃ気になるっつーの』

「あはは、それもそうねー!」


何が可笑しいんだか、そう思っているとマネジの篠岡千代が不思議そうな表情で尋ねてきた。



「監督とコーチって仲いいですね」

「幼馴染みだからね!」

『違う、腐れ縁』



幼馴染みとかプラスイメージで言うな。
まさか高校まで一緒だとは思いもしなかった。



「腐れ縁って何よ」

『幼稚園から高校まで一緒で、しかも三年間クラスまで同じ。
これを腐れ縁と言わずなんと言う!』



キョトンとした顔をする百枝に思わず脱力する。
百枝のことは嫌いじゃない。むしろサバサバとした性格は好きな部類だ。



『(……ここだよ、こういうところが嫌いなんだ)』

「明日から合宿です!みんな遅刻しないようにね」

『まて百枝、合宿って何だ?』

「え、知らないの?頭いいのに」

『合宿っつー単語の意味じゃねえ』



明日から合宿なんて聞いてないということを伝えれば、あっさりきっぱり。



「ごめんね!伝えるの忘れてたわ」



笑って告げる百枝に殺意が沸いたのは…一体人生で何度目か。
小学校のころからそうだ。
こいつに回ってきた連絡は絶対に俺には回ってこない。

台風の時だって連絡網は回ってきておらず、俺は一人びしょ濡れになって学校へ行った。



『俺はお前のそういうところが嫌いだ…!』

「私はそう言いながら嫌いにならないところが好きよ」



………女って怖い。






- END -

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