夏色

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どーするか、コレ。
クラスに移動して座ったはいいものの……さっきと同様視線が痛い。ハンパない。
なんだ?俺なんか変なのか?



「全員廊下出ろ―。体育館に移動すんぞー」



助かった…niceだティーチャー。
担任であろう教師によった教室の傍から告げられた言葉に、同じクラスのやつらが廊下へ出るのに習い自分も移動する。

順番はどうでもいいようで、一番最後に出た俺は必然的に最後に並ぶ。(それがなくても最後に並んだけど…)


体育館で入学式が初まり、校長の挨拶(禿たおっさんのセリフってどこでも似たようなもんで眠くなるよなぁ…危うく前に倒れそうだった…)。

PTA会長の挨拶(これはもう熟睡)、生徒会長の挨拶(眼鏡かけた真面目そーな人)。

新入生代表の挨拶(ちょっと大人しそうな女の子。男子が可愛いって言ってたな…)。

校歌を歌い(知らない校歌歌わすな…)、ようやく終了。



『……はぁ……』



何故か式の最中でも視線が痛かった。
もういいか…気にしてたら身がもたない…。
つーか早く来いよ担任…!女子どころか男子の視線もあって痛いんだよ…っ!



「おら全員座れー。お前らの担任の田村だ。一年間よろしくな。
よーし、そんじゃー全員自己紹介。
名前、中学、趣味云々、あとは質問するはよし、聞いてもよしだ。じゃ、右端から順に」
「え、あっはい!」



自己紹介……お約束だなぁ。
一番初めのやつ可哀想だ……端っこの後ろの席の俺は最後だな。




「よーし最後だなー」
『………狭霧蜜弥。中学は●●、趣味は………現在無し』
「おいおい、無しってのはないだろー」
『…じゃあ、昼寝?』
「そー来たか」



なんかおかしなこと言ったか…。
何がおかしかったのか、クラスの全員が笑っていた。もう言うことはないので座ると担任が「おい、まだだぞー」と笑いながら言った。
…もう終わった筈だが。



「はい、狭霧に何か質問がある人ー」
「はいっ!彼女いるんですかー!?」
「おい、初っ端からそれか…!?」



どんな質問だ。



『………いない、な』
「はいっ!じゃあタイプは!?
『(何故そんなことを…)
あー…大人しい感じ…?』



って、いきなり女子が前を向いて大人しくなったぞ…なんなんだ……。
もう質問はないようだったから今度こそ座ると、担任が盛大に笑った。



「あっはっは!人気だなー狭霧ー。
男から妬まれるぞー」
『………何の話ですか』



何だ妬みって…。
俺が最後だったから担任がチョークを持って黒板に文字を書きだし、紙を配り出した。



「初めに委員、係決めるぞ。そのあと希望の部活決まってるやつから出せー。まだ決まってない奴は明後日までだからなー。
じゃー…とりあえず相河、お前司会してくれ」
「俺っすか!?」
「委員長が決まるまででいいからよ」



なんと可哀想な相河くん。嫌々と出されて渋々司会をした。
係は適当に……社会でいいか……部活、は……。



「決まったな。今日はこれで終わりだ。
部活の紙あるやつ持ってこいー」



さて、と。どうするかな…。このまま帰ってもいいけど………。



『あー…空が綺麗だな』



窓から見上げてみると、青い空が広がっていた。
屋上へ行きたくなったので行ってみる。
どうやら西浦は屋上への出入りOKみたいで、少し古びたドアノブをひねると、白い床に足を踏み出した。



『あー…キモチー』



温かいコンクリートに体を寝転がせて目を閉じる。人間は視界が暗くなると肌の神経が敏感になる。
風が肌を撫でる感覚がして気持ちよくて…。ウトウトと眠気に身を委ねようとした時に、
カーンと懐かしい音がした気がした。



『……っ!』



跳ね起き、屋上のフェンスに手をかけて下を見回すと、グランドには野球部以外の運動部…。
そういえば野球部は第二グラウンドでやっるんだっけ…。
少し離れた所にあるグラウンド。



『……ちょっと、行ってみるか…』



覗くだけ。




そう、自分に言い聞かせて。
多分あの音は、昔の音だ。昔に聞いていた、自分で響かせていた音…。
まだ、忘れるなということだろうか。



『どーする…かなぁ…』



やるのか、やらないのか。
母さん達は何も言わないだろう。昔から自分で決めたことには文句はいわない主義だったから。

部員達と監督、顧問を見てから決めよう。
これでも人を見る目はある。気に食わなかったらやめればいい。元々やらないつもりでここへ来たんだからな。
考え込んでいると、草が生え茂っている第二グラウンドへついた。ちゃんと整備されてないのか…そういや今年からだっけ、硬式になったの。



『………?』



スパン、と気持ちの良い音が聞こえた。ボールがミットに収まる音だ。
誰か投球してんのかな…。………見たい。

捕手をかじっていた自分にとって、投手はとてもきになる存在だ。
フェンスの網に手をかけて、投球しているところからは見えないところで見る。



『……ん…?(なんか、おかしくないか…あれ)』



遠目からだからよくわからないが……ストレート…だよな。なんか…っ、浮いてる…!?
しかも…ミットが動いてない。スピードは遅い代わりに、余程コントロールがいいのか。



(俺でも、四分割が限界だ…)



投手を見てみると一見ひ弱そうな男だった。
しばらく見ていると、ニット帽…?を被った男がバッドを持って構えた。どうやら勝負をするらしい。



『……へえ、お手並み拝見と行こうか』



一応強豪校に推薦受けた身だし?入るからには強いか面白いか、他とは違うところがないと…。

すると、どうやら三打席勝負だったようで、何球か飛んだけど内野まで。打者は結構背の高い力のありそうなやつ。そんなやつを外野まで飛ばせさせない投手……そして捕手も凄い。



『…………面白そうだ。(だけど、まだ続けようと思うきっかけにはならない)』



何か、もっとこう…胸に突き刺さるようなことがないと………って…。



『………ケツバット……か』



体型のいい(ムッキムキって意味じゃないぞ)女性がバッドを持って…投手のやつに大きく構えて…バッシイイイィィィン…。



強烈な一撃だな……。





(確かにある意味胸っつーか、目やら頭やらに突き刺さったな…)(……ん、千代?)
(あわわわわわ…蜜弥君…けけけけ、けつば…っ)
(あー…気にするな。てかマネジ志望?)
(う、うん……でも………(チラリとグラウンドを見る))
(………気持ちは分かる。悩みどころだな(ポン、と肩に手を置いた))
(うん…)

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