溢れいずる思い
□其の七
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その日の夕方俺は様子を見に診療所を訪ねた
《斎藤…》
少し疲れた感じの顔をした朔弥が迎えてくれた
「様子はどうだ?」
《あれからまだ一向に目を覚まさない…》
「そうか…」
そこへ…
「朔弥君!」
《優助!どうした?》
血まみれの着物の秋月先生が入って来た
「大怪我をした患者が三人運び込まれてね…すまないが処置を手伝ってくれないか?」
《しかし…》
雪人と秋月先生に交互に視線を向けながら戸惑うように言う
「姫様がまだ目を覚まさないのか…なら離れられないか…」
《ああ…気を失ってから意識を取り戻した時に側に誰もいないのが一番嫌なんだよな…》
「俺が付いていよう」
俺は気付いたらそう言っていた
《しかし、仕事が…》
「今日は昼の巡察だったから大丈夫だ」