溢れいずる思い

□其の弐
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俺は黒い感情に戸惑いながらも頓所を後にした。

一人で宛もなく歩いていると前方に雪人と山崎が茶屋の外の席でお茶をしているのが見える

男同士の格好の為かかなり目立っているようだ

―以前朔弥の為に女の格好で行ったのはこの為か…

俺は納得した。

そのまま気配を殺して近づく…

「奥の席に行きませんか?」
『いや…このままでいい』
「体調悪いのですか?全く団子に手を付けていないようですが…最近食事も残しがちですし…」
『いや…最近夢見が悪いだけだ…』
「どんな夢なのですか?」


『悲しくて苦しい…でも忘れることが出来ない…』
「只の夢でしょう?」
『いや…俺が十三の時に実際あった事だ…夢と一緒に感じた感触がまだ残ってる』
「!?初めて人を斬り殺した時ですか?」
『違う…な…その時は刀を持ってはいなかった』
「何故…」
そう山崎が問うと切ない顔をした。
その表情は見ている方まで胸が苦しくなるものだった。
『熱を出して寝込んでいた時だからな…』
「その病は治ったのですか?」
『いや…あの時の熱は心労によるものだったから』
「そうか…(駄目元で後で調べて見るか…)」
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