粉雪

□序片〜江戸へ〜
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―月城家

『けほっ…けほっ…』
「姫様…」
熱を出して咳き込む少女の傍らの侍女は心配気に見守る

医者の診察によると季節の変わり目により体調を崩したという事であった

少女は生まれつき体が弱く少しでも無理をするとたちまち熱を出して寝込んでしまいます。

『うっ…』
「姫様!大丈夫ですか?」
『だるいです…』
「これから冬になりますからね…京の寒さはより堪えるのでしょう…」
『そう…ね…』

しばらく沈黙が流れた

『江戸に…行きたい…』
「江戸でございますか?」
『江戸…行きたい…朔…会いたい…』
「姫様…」
寂しげな少女に困ったように呟く
「雪音様…」
『茜…』
名前を呼ぶと反応して名前を呼び返してくれる
しかし…
「姫様…」

―プイッ!

そう呼ぶと顔を背けて聞こえない振りをする

名前を呼んで欲しいが故の可愛い我が儘

「雪音様…」
『何?』
「江戸にある別邸に療状に行かれてはいかがでしょうか?」
『本当に行っていいの?』
「ええ。明日熱が下がったら行きましょう」
『ええ。』
「では今日はゆっくりお休みくださいませ。」
そう言って去って行く

江戸に行きたいので大人しく従う雪音
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