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□亜麻色の幻想
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‐第一章‐



柔らかな日差しが降り注ぐ。


生い茂る草木をかき分けて、レインはようやく目的の人物を見つけた。



『ゴン』


「あ、レイン?どうしたの?」



目の前の小さな背中に静かに声をかける。


声だけで誰かを判断し返事をしたゴンは、顔だけをこちらに向けてそう聞いた。


レインはそんなゴンの両手に未だに握られているものに気付き、軽く嘆息するとゆっくりとゴンに近づき、その隣に腰をおろした。



『やっぱり、どうしてもハンターになりたいのね』


「うん!」



彼がミトさんに認めてもらうために釣りを始めてもう20時間は経つ。


その間彼に食事を届けていたのは他でもない自分で、彼はやはり昨日と同じ位置で釣竿を握り締め、ひたすらに水面を見つめていた。



「きっと親父に会ってみせるから」


『……』


「親父が魅せられた仕事なんだ。ハンターってのはよっぽど面白いんだと思う」


『…ねえ、ゴン。あなたはまだ11歳なのよ?そんな危険なことをするにはまだ早すぎると思うわ』



小さな頭を撫でてそう説得してみる。


彼がそう簡単に己の信念を曲げないと知っていて、それでも何とか考え直して欲しいと願いを込めて。



「……」



しかし、やはりそれも無意味に終わってしまった。


真剣に真っ直ぐに自分を見据える目。


それを見れば誰でも諦めざるを得なくなるだろう。


レインは再び溜め息を吐くと、一際大きな木を指差した。



『私ならあの木の上で釣りをするわ。魚は人間の気配に敏感なのよ』



水面近くにいれば沼の主も警戒してしまうから。



「あっ!」



そうか!と納得した様子のゴンは早速竿を地上に戻すと木に登り、再び浮きを投げ入れた。




(ゴン…)



真剣なその様子をレインはしばし何かを考えるように見つめていたが、やがて自分の気配こそが邪魔をしてはいけないと立ちあがりその場をあとにした。













遠ざかっていく、自分より背の高い後ろ姿を見つめる。


もちろん釣りに集中するのも止めずに。



なんだか まるで自分も釣ったことのあるような言い方



「……」




…まっさかぁ!



きっと自分の思い違いだと信じ、ゴンはしばらく華奢で穏やかな優しい幼なじみの後ろ姿を見送ったあと水面へと視線を戻した。



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