secretstory

□素顔
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人気のなくなった校舎、その中の一室

補習の最中であろう少年は、しかし、手元のプリントと向き合う事もせずに、窓の外を眺めていた


その背を見遣る一つの姿

黒曜中の制服を纏った長身痩躯

六道骸である

なんの気無しに街に出た彼の足は、気付けば真っ直ぐにこの学校へと向いていたのだ

気配で綱吉が居る事は分かった

ここまで来ては、せめて姿をと、宿敵に見付からぬ様に気配を殺し、足音を消して訪れた骸は、教室の前で足を止めた

時間が時間の為、補習の課題を前に慌てふためいているだろうと思っていた綱吉は、ただ一心に外を見詰めている

視線を追っても、別段何があると云う訳でもない


ならば何を?


現状で課題以上に意識を向ける可きもの等ないはずの綱吉が見ているものが気になった

と云うより寧ろ、食い入る様に見詰めているその顔が見たい

いつも、驚く程にころころと表情を変える綱吉

それは、常に傍にある誰かの為に作られた仮面

自分が被る、他者を偽る為のものとは違う、彼の優しい心から生まれた無意識の仮面


今なら、

自分以外の誰もいない今だったら、見られる

当たり前に被ってしまう仮面の下の、彼の素顔

本人すら知らない逸れを、今なら


思い付いてしまえば止まらない

何せ自分は貪欲なのだ

心を寄せた相手なら、その髪の一筋すら手に入れたい

自分が知らないものなんて赦せない

心を、躯を、視線を、吐息を、鼓動までもを奪ってしまいたい

狂っていると言われても、それが六道骸なのだ


口角に笑みを乗せ、ゆっくりと近付いていく


さぁ、見せて

君の素顔を


それはきっと、何より儚く美しい


そして映して

他の何でも無く、この僕を



魂までも奪い、染め上げたい

どこまでも綺麗な君


さぁ、はやく






end
 

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