secretstory
□カーネリアン
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開け放たれたカーテンから満月の光が差し込むアンティーク調な部屋
南の頂きに座する月明かりだけが唯一の光源で、色彩の全てはモノクロに塗り替えられている
ぎしりと音を立てるソファの上で、人目を憚る様に、或は見せ付ける様に四肢を絡めるシルエットが浮かび、衣擦れの狭間に甘い息を弾ませる
「‥っ。はぁっ、も‥」
息も絶え絶えになりながら、いやいやと首を振る度に、色素の薄い錦糸がふわふわと舞う
「まだだよ。‥ほら、もう一回」
苦しかったのか、涙の滲む瞳で寝そべる綱吉を見下ろするジョットの項に手を回し、強引に首筋に顔を埋めさせた
しかしジョットは尚も拒絶を示し、綱吉の胸を押したり叩いたりと抵抗と呼べるのか分からない程度の抵抗を続ける
一向に牙を突き立てる様子を見せないジョットに、綱吉は嘆息し、押さえ付ける力を緩めた
「‥I世、どうして牙を立てないの?全然足りてないでしょ?」
「十分だからもういいと言ったんだ」
血に濡れた口元を指先で拭い、不機嫌そうに眉をしかめるも、綱吉はさしてきにとめずに、繋いでいたジョットの手を引いた
腹の上に座り込んでいたジョットは綱吉に覆い被さる様な体勢に瞠目する
「っ!綱吉、オレは‥!」
「もう飲まなくていいよ。だから、ね?後片付け」
そう言って笑みを深める綱吉に、ジョットは胸を撫で下ろす様に息を吐き、自身が穿った首筋の噛み跡へ唇を寄せた
零してしまった血に舌を這わせ、朱く染まった肌を清めていく
その度に耳を掠める綱吉の吐息は僅かに色を帯びていた
古来よりヴァンパイアの牙は、人に過度の快楽を齎すものとして言い伝えられ今日に至る
それは現実に起こりうる事であり、程度の差こそあれどヴァンパイアにも顕れる現象なのだ
今し方までジョットの牙に曝されていた綱吉も、例に漏れずその甘い疼きに身を焦がしていた
「‥‥ッ、ジョット‥」
「なんだ?綱吉」
焦りを帯びた綱吉の声音に幾分上機嫌になったジョットは、惚けた風に聞き返しながら、殊更ゆっくりと舐め上げる
人としてもヴァンパイアとしても年長で、更に綱吉を夜の一族へ転生させた親とも謂える立場であるにも拘わらず、ジョットは綱吉の策に嵌まり‥と言うか、押し切られ、いつもいい様に玩ばれる
『玩ぶ』では語弊がある気はするが、毎回それくらい綱吉のいい様に扱われてるのも事実だ
「(たまには意趣返しもいいだろう)」
日頃の鬱憤‥とまでは行かないが、それを払ういい機会だと、ジョットは肩を掴んでいた手をそっと胸に移動させた
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