ガンダム00 BL小説

□別れと再開
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『別れと再開』

2308年3月15日
忘れるな
あの日、起きたことを…
彼の生き様を…


今日は、朝からずっと雨が降っている。まるで、あの日起きたことを、彼の死を悲しんでいるように……。
そんな雨の中、アイルランドにある墓地をスーツに身を包み、右手に花束を持った少年が傘もささずに歩いていた。その少年の名はティエリア・アーデ。4年前、ティエリアはソレスタルビーイングのガンダムマイスターとして活動していた。いや、4年前だけではない。今も彼は、ガンダムマイスターとして活動している。
その様な身の彼がどうしてこんな所にいるのか。それは、今日が命日だからだ。4年前の国連軍との戦いで志半ばで散っていったガンダムマイスター。いつも、マイスターの中でリーダー的存在だった男−ロックオン・ストラトスの。
ティエリアが、他の墓石より少し大きめの墓石の前で足を止めた。その墓石は四角い大きな箱のような石の上に十字架をかたどった石を乗せてできていた。ここにロックオンが眠っている…。
ティエリアは持っていた花束を墓の前に置き、一人、物思いにふけった。
「ロックオン…ストラトス……」
ティエリアは、彼と暮らした日々を思い出していた。時に慰め、励ましてくれた彼のことを。ティエリアが、彼に傷を負わせてしまった時もそうだ。ロックオンは、責められてもおかしくないティエリアを無条件に許し、励ましてくれた。

どれくらいの時間、彼のことを考えていたのだろう。いつのまにか雨が少し激しくなっていた。そろそろ帰ろう、とティエリアが心の中で呟いたちょうどその時、後ろから突然声が聞こえた。
「ティエリアー、何やってんだ?こんなとこで」
ティエリアの目が見開かれる。
懐かしい。
今でもはっきりと覚えている。
もう二度と聞くことができないと思っていた声。
ティエリアが勢いよく振り返る。
おぉ、と先ほどの声の主が少し驚いた声をあげた。
「ロ、ロックオン…!!」
「よお」
そこには、先程ティエリアが花束を捧げた墓に眠っているはずのガンダムマイスター、ロックオン・ストラトスの姿があった。
動揺を隠せない。
「何故…?」
何故、ここにいる?
貴方はあの時……。
だが、今のティエリアにとって、そんなことはどうでもよかった。
「分かっていた。分かっていたはずなのに…」
「ティエリア…?」
「誰が死んでもおかしくないと分かっていたのに…」
視界がぼやけ始める。ここで初めてティエリアは泣いていることに気がついた。
「なのに…」
泪が止まらない。
「俺は死ぬつもりなんて無かったぜ」
「!」
ティエリアが顔を上げる。
「どんな事があっても生き抜くつもりだった」
「嘘だ!……生きていてほしかった。ずっと…ずっと……。誰が死んでも同じだと思っていたのに…なのに…ずっと生きていてほしいと思った。皆に…貴方に……」
雨が、ティエリアの身体を容赦なく濡らす。
「でもまぁ、なっちまったもんはしょうがねー」
「…ロックオン……」
「諦めるな。前を向いて生きろ。そうすりゃきっと、道は開ける」
「……」
「後は頼んだぜ、ティエリア…。世界を変えてくれ」
「ロックオン…!!」
「じゃあな」
ロックオンが軽く手を挙げて言った。
「ロックオン!!」
慌ててティエリアがロックオンの方へ手を伸ばす。
嫌だ……。
行かないで…!!
「−!!」
だが、手を伸ばした先にロックオンの姿は無かった。ティエリアの眼が見開かれる。
いない!?
ティエリアは急いで辺りを見回した。しかし、何処を見てもロックオンの姿は見当たらなかった。
「ロックオン…」
ティエリアは、キッ、と唇を噛み、眼から溢れる泪をふいた。そして、勢いよく顔を上げた。今のティエリアの眼からはすでに迷いの色は消えていた。諦めずに、前を向いて生きていく。その覚悟の光がティエリアの眼には宿っていた。
−雨はもう、やんでいた。

そして、約半年後、ティエリアはかつての戦友と再開する。
「やはりアロウズの動きを探っていたか。久しぶりだな、刹那・F・セイエイ」
「…ティエリア・アーデ……!?」 
〜END〜

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