企画物小説
□ワイングラスの音と…
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上品にクリスマスの飾りつけをされた店の中に、静かな音楽が流れ、なんともいえない雰囲気を作り出していた。
その店の一番風景が綺麗に見える席に、2人の男…橘友雅と藤原鷹道が座っていた。
「今日はお誘い有り難うございます。友雅さん」
前菜を食べる友雅に、丁寧に今日誘ってくれた礼を言う。
「鷹道、堅苦しいのはもういいよ。それよりも、今は2人の夜を楽しもう」
すらすらと恥ずかしげもなくそんな台詞を口に出すのに半分呆れながらも、半分嬉しくなってしまう自分に気付いて、鷹道は少し笑ってしまう。
「相変わらずですね。そんな事言っているのは私だけではないのでしょう?」
「君だけだよ。私の頭の中に住んでいるのは君だけだからね」
「さぁ…どうですかね」
鋭い瞳で言われた鷹道は、それが本当の事だと知りながら、いつもいつも苦労している仕返しとばかりに、はぐらかす。
「君も相変わらずだね。私の事をそれだけ知りながらそうやってはぐらかすのだから」
「日頃の行いが悪いからじゃないですか?」
「ん?何のことだい?心あたりがないねぇ」
笑いながらも少し困り顔でいう鷹道が可愛くて、手を取りながら友雅は言った。