テニスの王子様 BL小説

□どうしようもないくらいに(塚不二)
1ページ/1ページ



本気で愛してる。


現実味をおびない言葉。


ずっと、そう思ってた。


でも、その言葉が一番現実味が無かった。


「不二」


いつからか、手塚に自分の名前を呼ばれると、手塚の元へ駆け寄っていってしまうようになって、


「なに?」


たったそれだけの、その一言を言う。


そして、いつからか、手塚がいない事に耐えられなくなって、


「今日の練習試合は、お前にはシングルス3に回ってもらう事になった」
「…今日の練習試合のメンバー決めは、手塚がしたの?」
「あぁ」


部活中のこんな僅かな時間しか一緒にいないけれど、僅かな時間を失いたくないなんて柄にもなく思うようになった。


そうしたら、いつのまにか、


「全く、君の注文を聞く僕の身にもなってよね?」
「分かっている癖にな。俺が、どんな気持ちで言っているかなんて。それに」
「それに、その注文を聞いてきたのはお前だろう?でしょ?分かってるよ」
「あぁ」


自分を一番理解してくれる相手にお互いになっていた。


やっと気付いた。本気で愛してるのリアル。


けれど、僕はおもいを伝えてはけしていけない。
これで、僕が女だったらすぐにでも…とまではいかないけれど、いずれにしても君におもいを伝えるのだろう。


でも、本当に僕が女であったら絶対に手塚と話さない。


もしも、なんていらないのだけど、なんだか複雑な心境になる。


僕は男同士でも良いけれど。


君はそうでないかもしれない。


それでも


「手塚?」


僕が名を呼べば


「どうした?」


僕の近くまで来て君が聞き返してくれる。


僕と一緒の感情であったら良いのにと、思う反面、一緒の感情でなければ良いと思う。


『なにも生み出しはしない』
『気持ち悪い』


君の進む道をふさぐ必要ない言葉。


自分勝手でそれを生み出す事は、けしてゆるされない。


だから、隣りにいられるだけで満足する。


「不二?」
「なに?」
「…いや…なんでもないんだ」


ただ、僕が手塚を見る時の感情に似たものを、目の中のなにかに感じる時だけ、つい手を伸ばしそうになってしまう。


「…そっか」


今日も、伸ばしそうになった手を引いて、君の隣りへいき、肩を一瞬触れあわせて、一定の距離を置く。


どうしようもなく愛してる。


そんな言葉を思い出した。


END.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ