テニスの王子様 BL小説
□どうしようもないくらいに(塚不二)
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本気で愛してる。
現実味をおびない言葉。
ずっと、そう思ってた。
でも、その言葉が一番現実味が無かった。
「不二」
いつからか、手塚に自分の名前を呼ばれると、手塚の元へ駆け寄っていってしまうようになって、
「なに?」
たったそれだけの、その一言を言う。
そして、いつからか、手塚がいない事に耐えられなくなって、
「今日の練習試合は、お前にはシングルス3に回ってもらう事になった」
「…今日の練習試合のメンバー決めは、手塚がしたの?」
「あぁ」
部活中のこんな僅かな時間しか一緒にいないけれど、僅かな時間を失いたくないなんて柄にもなく思うようになった。
そうしたら、いつのまにか、
「全く、君の注文を聞く僕の身にもなってよね?」
「分かっている癖にな。俺が、どんな気持ちで言っているかなんて。それに」
「それに、その注文を聞いてきたのはお前だろう?でしょ?分かってるよ」
「あぁ」
自分を一番理解してくれる相手にお互いになっていた。
やっと気付いた。本気で愛してるのリアル。
けれど、僕はおもいを伝えてはけしていけない。
これで、僕が女だったらすぐにでも…とまではいかないけれど、いずれにしても君におもいを伝えるのだろう。
でも、本当に僕が女であったら絶対に手塚と話さない。
もしも、なんていらないのだけど、なんだか複雑な心境になる。
僕は男同士でも良いけれど。
君はそうでないかもしれない。
それでも
「手塚?」
僕が名を呼べば
「どうした?」
僕の近くまで来て君が聞き返してくれる。
僕と一緒の感情であったら良いのにと、思う反面、一緒の感情でなければ良いと思う。
『なにも生み出しはしない』
『気持ち悪い』
君の進む道をふさぐ必要ない言葉。
自分勝手でそれを生み出す事は、けしてゆるされない。
だから、隣りにいられるだけで満足する。
「不二?」
「なに?」
「…いや…なんでもないんだ」
ただ、僕が手塚を見る時の感情に似たものを、目の中のなにかに感じる時だけ、つい手を伸ばしそうになってしまう。
「…そっか」
今日も、伸ばしそうになった手を引いて、君の隣りへいき、肩を一瞬触れあわせて、一定の距離を置く。
どうしようもなく愛してる。
そんな言葉を思い出した。
END.