テニスの王子様 BL小説

□メロディーに歌をのせれるようになったら(塚不二)
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「手塚、話しがあるんだ。真剣な」
これは、僕…不二周助の見ている夢だと分かっている。だから、現実と違う事を言ってもどうしようもないし、後悔もしていないから、現実と同じ台詞を言った。
「手塚、僕達もう別れよう」
高校からの帰り道、手塚に向かって僕は、心臓を押しつぶされそうになりながら、できるだけ淡々と言う。
「…何故だ?」
手塚が、眼鏡の奥で驚きと悲愴とが入り混じった目で僕を見つめてくる。
「君は、僕の予想だけれど来年にもプロ入りをするだろう。その時は僕と付き合っている事を隠せれるかもしれないけれど、やがてバレる。そうしたら…どうなるかなんて知れてる。…周りは君が立ち止まる事を許さないだろう」
「…」
「だいたい、最初から男同士ってのに無理があったんだよ…認められるなんてありえないね」
「不二…本当にお前は、それで良いと思っているのか…?」
「!……うん」
それで良いと思っているのか…の、一言は何回聞いても、ハッ…と、する。それは、自分自身が良いとは思っていないからだ。付き合う事を無かった事に、後悔は無かった、けれど、気持ちをそんな理由で無かった事にするのは後悔した…。
でも、君の事が好きなんだ…と言えば、まるで、僕は君の事が好きだけれど、君が別れなければならなくさせている、という風に聞こえ、僕自身が悲劇のヒロインになろうとしている卑怯者だとおもわれる…そうでなくても、手塚を困らせると僕は思ってた。
「ごめんね…僕は、幼かったんだ…どんな形でも気持ちだけは、繋がっていれば良いっていう事が信じられないくらいに…」
現実では言わなかった言葉を手塚に言うと、手塚はふっと消えてしまった。



朝というよりも深夜といったほうが良いような暗さの中、ビルの一室で不二は、ゆっくりと目覚めた。
「(……やっぱり……夢か)」
先程まで見ていた夢の内容に、眉を寄せながらも、時計をチラリと見やった後、頭の中をすぐに切り替えて服を着替える。
「(今日は…朝は、通常勤務、昼から会議、その後は、接待先との食事会か…)」
ビッシリとスケジュールが書かれたスケジュール帳を見ながら、食事を不二はとる。
不二は、短期大学卒業後に父親の友達のスポーツ用品会社社長に見込まれて、2年間秘書として働いた後に、24歳という若さで社長に任命されたのだ。
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