テニスの王子様 BL小説

□おれんじいろ(塚不二)
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「不二はもう、進路をどうするか決まったのか?」
いきなり手塚が言った言葉に、不二は食べようとしていた卵焼きを落としそうになりながらも、
「…どうしたの?いきなり?」
と、出来る限り冷静に聞き返す。
だが、手塚は答えになっていないと、眉間に皺をよせて返しただけで黙ってしまったので、答えなければ、手塚が自分の疑問には答えないだろう事を、不二はすぐ理解する。
「決まっていないけど…そうだね、君を撮る専属写真家にでもなろうかなぁ」
冗談まじりに、気楽に笑ってそう言うと、手塚が何かを考え込むように手をくんだ。
「そう…か」
「で、いきなりどうしたの?」
「いや…決まっていないのなら、不二を誘おうと思ってな」
「?」
「一緒に、ドイツで暮らさないか?」
「ぇ?!」
その言葉に目を見開きながら、不二は視線を上げた。
「まだ、決まっていないなら、俺とドイツへ行って暮らしてみないかと、聞いている。勿論、お前が日本にいたいと言うのなら、強制はしないが…」
「………えーと…手塚?それ、プロポーズみたいに聞こえるんだけど…?」
「プロポーズのつもりだが?」
唖然とする不二をよそに、手塚は微かに笑いながらサラリと、言った。

……なーんかなぁ…1人で慌てちゃって馬鹿みたいじゃないか。それに、最初っから答えは決まってる。
一人思いながら不二は、目を細めて、ふっと笑った。

「答えてもらえるか?不二」
「分かってるのに、聞くなんて相変わらずだね。…勿論、行くに決まってるじゃないか」
「良かった」
微睡むような声で、手塚が耳元で囁く。それに、不二がそっと目を閉じると、手塚は不二にキスを落とし、唇を割って口の中に舌を侵入させて、愛おしむように舌先や舌横をそっとなぞる。
「……んぅ…」
こういうキスが、不二は一番好きだ。少しだけの快感と、手塚の動き(そんざい)を確かに感じられる。だから、不二はこのキスが好きなのだ。
「…ん」
ゆっくりと、唇が離された。
不二は、余韻を残す瞳で手塚を見つめた後、手塚の腰に手を回して抱きつくと、手塚の手が不二の体を包んだ。

〜END〜

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