テニスの王子様 BL小説
□理解者(塚不二)
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もう12時をまわるだろうかという時間、灯りがほとんどない砂利道を一つの人影が歩く。
合宿所を抜け出してきた手塚は、ソッとその影に近づいた。
「…手塚…」
振り向いた人影は、少し驚いている一方、反対に手塚はやはりな…と思った。
何故なら、その人影の主は不二で、手塚が気付いた時には隣りの不二の布団が空になっていたからだ。
「全く…勝手にいなくなるな…」
「うん。ごめん…でも、一人になりたかったんだ…」
不二のその言葉を聞いて、手塚は眉をひそめた。何故なら、不二が一人になりたがる理由を知っていたからだ。
それは、今日の白石・赤也ペアーによるダブルス戦で、白石が包帯の下に純金の重しを着けていたと分かり、不二との試合の時も着けていた事が判明したという理由だった。
しかも、不二が手塚以外の人に本気で挑もうとした最初の試合だったのだ。
しかし、その事実に対してを白石は、忘れていたと軽く言ったのだ。勿論、不二も軽い雰囲気であったし、どちらかと言えば面白がっているようにも見えた。
しかし、手塚はそれが演じられている『不二』なのだと知っていた。
不二は、自分の傷つき苦しむ姿をみんなへ見せるのは、自分のキャラではないのを知っていた。
それに、他人に慰められるのも、心配されるのも嫌なのだ。
そんな不二だから、手塚は1人にしてはいけないと…そばに自分がいてやらなければならないと…と、強く思い、一人になりたい不二の気持ちを知りながらもあえて追いかけてきたのだ。
「上手く抜け出せたと思ったのになぁ…」
そう言って不二は、近くのベンチに座る。
手塚は、ベンチの隣りにある自動販売機で、紅茶と珈琲を買って、紅茶を不二に手渡した。
「有難う」
そして、その言葉を最後に沈黙が流れる。
「………」
「………」
そして、その沈黙を先に破ったのは…
「ね、手塚」
不二だった。