求愛ガール


□第二章 少女は愛に泣く
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白い湯気があたりを包む。



「熱いねぇ」



そう呟くと、背中に触れる温もりがそっと動いた。



「…ちょっとお湯熱すぎましたね」



濡れた髪を後頭部まであげて一つに束ねたあたしは、ほてった頬に手をあてた。


湯気に熱くなった体は、ぴっとりと後ろの彼にくっついてるせいで更に熱くなっている。



「……ってか、俊くんて意外に積極的なんだね」



腰に回ってる彼の腕に自分の腕を重ねた。


乳白色の湯舟のなか。


あたしは、俊くんの体に包まれるように座っていた。


時々、彼の長い足に肘があたる。



「てっきりもっと…、ちょ」



振り向きざまに後ろからギュッと抱き着かれてあたしはそのまま動けなくなってしまった。



「俊くん?…―――っ!」



強く首筋を吸われて、小さな朱い花が咲く。



「…先輩、格好がエロい」



お湯が伝ううなじを人差し指でそっと撫でられたと思った時には、もう唇を奪われていた。



「んっ、ふ……ん」



くちゅり、と官能的な音をたてる唇に体が快楽を求めはじめる。


口内を舐める彼の舌をそっと舐めかえすと、彼の瞳が熱っぽく潤むのが分かった。



体中を這いまわる長い指。


あたしが何よりも欲している、誰かに愛されている瞬間。



「しゅ、ん……く……っ…んぁ」



お風呂のなかだからか、エコー効果によって自分の声がやけに耳に響く。



「声ヤバすぎ…」



肌を愛撫する彼の唇が言葉を発した時。


あたしの体は俊くんと向き合うようにして長い腕のなかに閉じ込められていた。



「…先輩」



低く彼の声が耳元で囁く。


熱を帯びた声は、耳のなかで甘く響く。



「好きだよ…」



夜も囁かれた言葉に、あたしはただ黙って快感に身を任せた。




乳白色のお湯の温もり。

体に触れる唇の熱さ。

熱にとろんと潤んだ彼の瞳。



すべてに酔わされて、あたしは危うく溺れかけた。



 
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