求愛ガール


□第一章 少女は愛を求む
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冷たい空気が肌を刺す。



「っ、………」



鋭く肌に刺さる冷気が、肌に張りつく汗を冷やす。


けれど、そんなことさえ気にならないほどあたしの体は熱くほてっていた。



「………っ、美優(ミユ)…」



薄暗い体育館倉庫。


息を吐けば白い模様ができあがる。


自分の上にいる男を見ながら、あたしの心は空気と同じくらいしんしんと冷え切っていた。



触れる肌の熱さ。


撫でる指の感触。


一定の速さで体に訪れるリズムが、淫らな行為を明白に心に刻みつけていく。



―――あぁ、またハズレ。



小さくため息をつきながら、そっと目をつぶった。



…あたし、何してんだろ。



たしかに、自分でもそう思う時はある。


むしろ今じゃ、そう思うことのほうが多くなってる。


無駄に肌を重ねて、温もりを求めて。


喜びも、快感も、もはや痛みさえも、あたしには分からなくなっていた。



『美ー優ちゃん、これから暇?』

『いいよ。遊ぼ』



売り言葉に買い言葉。


相手を見つけては、ただ毎日を行為のために捧げる日々。


生きてる意味も、行為を重ねる意味も、もう忘れた。


あぁあたし…なんでこんなこと、してるんだっけ。



荒い吐息が、あらわになった肌を這う。


それが太股の内側に触れた時、なぜかあたしは反射的に男の胸を思いっきり押し返していた。



「……ごめん。もうやめよ」



そう呟けば、かえってくるのは不満そうな沈黙。



「……なんで?俺、下手?」


なおも唇を押し付けて“印”をつけ続ける彼に、軽い嫌悪感を覚える。



「別に、なんか今日はのらないだけ」



上辺だけの嘘を吐いて、散らかった制服をかき集めた。



 
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