03/21の日記

22:38
もしかして・・。(ホワイトデー文)
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もう少し、更新を自粛した方がいいのかとも思いましたが・・。
もしかすると、ここを訪問して下さる方の、(ミジンコ程度ですが)気晴らしになるのかもしれない、と考えました。

ホワイトデー文を書いていたので、遅ればせながらUPしてみます。
一応バレンタイン文『春色チョコレート』の続きになっております。






『君の中の桜色』



ヴォルフはお菓子の山の中で、幸せそうに微笑んでいた。

クッキーに、チョコレート。名前は知らないけれど、ふんわり丸い焼き菓子。
孤児院の子たちからは、手作りのキャンディーが届いた。
しかも、お菓子には銘々、ヴォルフの似顔絵付なのだ。

厳密に言うと、三日月の兜の下、赤い紐をきゅっと結び「えいえいおー!」なんて叫んでいるヴォルフの似顔絵という事になるんだけど。

そう、ホワイトデーのプレゼントに囲まれて、ヴォルフは今、蕩けるような笑顔をしてるのだ。

ヴォルフの笑顔があまりに眩しくて綺麗で。胸が大袈裟な音を立て始めたものだから、俺は慌てて魔王部屋に逃げ込んでしまったんだ。
渡そうと思っていたお返しをポケットに突っ込んで、さ。

だって、ヘタしたらボケっと一時間でも二時間でもアイツを馬鹿面下げて見つめてそうだったし・・。


俺は、去る2月14日にヴォルフラムへの気持を意識してから、態度が少しおかしくなっていた。



「ユーリ、いるか?」
「ヴォ、ヴォルフ。どうしたの、お前、さっきはサロンでお店を広げていた筈じゃ・・」
「お見せは広げるものではないぞ?まあいい、ユーリに面白いものを持って来てやったんだ」

ヴォルフは手に水玉もようのカラフルな袋を持っている。
袋を覗いてみれば中にも小さな箱、さらに手作りのマスコットらしきものが入っていた。

マスコットを手にした俺は、思わず噴き出してしまう。

「あはは、なんだこれー!」
「なあ。笑ってしまうだろう?こじか学園からのプレゼントだ」

兜ヴォルフの人形はいいとして、その横には俺の人形が・・。
キラキラ金の王冠と赤いマントの俺がくっついているのだ。
魔王の俺が、ヴォルフの横でまあるい頬をしている。
異種感がたっぷり溢れて居るけれど、なんとなく仲良しカップルみたい。ちょっぴりくすぐったかった。

「なんだよ。すっげーちぐはぐじゃん。不釣り合いだよなあ」

だから、何と言っていいか判らず微妙な笑顔を作っちゃったんだよ。
ニヤける顔を強引に引き締めるみたいな、そんな笑顔。

要するに照れ臭さを誤魔化してたんだけど・・・。

「・・ふむ。ユーリとしては、妙な誤解は迷惑なだけだって事を忘れていたな」

何を勘違いしたのか、ヴォルフラムは口元を一文字に作りかえ、その人形を袋に入れ直したのだ。
失礼したな、なんて言って。
そして袋の紐を、口元以上に強く引っ張る。

ちがう、そんなつもりじゃないんだって!
恥ずかしいってのは、要は嬉しいのを悟られたくない、っていう男ごころなんだ。

でもそこは恋愛偏差値低レベルの俺の哀しい習性。
証拠にヴォルフラムはすっかり仏頂面になってしまった。

取り繕うってワケじゃないけれど。俺は咄嗟に袋を奪い、例の人形を取りだした。

「い、いいじゃん、ソレ!!お前凄く可愛いし、隣の俺がなんとも間抜けでKYでいい味出してる!」
「・・おひなさまのごとく夫婦公然と並べられて、お前は迷惑じゃないのか?」
「迷惑って?むしろ嬉しいよ。俺もコレ、欲しいくらい」
「ユーリ・・?」
「うん。俺も・・欲しい!!」

凄く勇気がいったんだ。
これだけの言葉。愛の告白でもなんでもない。
だけど、意気地なしな自分に決別する為の、大事な言葉だったんだ、と思う。

声が小さくなってしまったのは、やっぱりへなちょこな所為。仕様だろう。

「そうかそうか、ユーリがぼくたちの人形を欲しがるとはな!ではお前にやるとしよう!」

あくまでも男前なヴォルフは、爽やかに微笑みつつ、人形を俺の手に押しつけた。
惜しいかな。ちょっとだけ違う。

「あのさ。・・二人のモノにしたらどうかな。たとえばサイドテーブルの引出に飾ったら可愛いじゃん」

バカな提案だ。
しかも俺は真っ赤になりつつ、ヴォルフラムの手を引っ張ったんだ。人形ごと。

「ここにさ、こうやって。ほら」
「ふ、ふむふむ」

ベッドの天蓋を支える柱に、二人で赤いリボンを結ぶ。

指輪交換か?はたまたケーキ入刀か?
脳内をアイラービューフォエーバー・・とどっかのブライダルマガジンのCMが駆け廻って、妙に照れ臭い。

人を好きになって、傍目にみっともない真似をして。
浮かれている自分が、妙に新鮮に感じたりして。

「ほら。結べた」

俺の気持ち少しは通じてるかな、と期待を込めてヴォルフラムの横顔を覗き見する。

するとヴォルフラムも俺を超える赤さに耳を染めて、つんと口を尖らせていた。
言葉だけでは伝わらない、ニュアンスがちゃんとこころに届いている。

俺は、指先まで桜色に染まったヴォルフの手をふんわり包み込む。

「俺たちもこんな風に仲良く。不釣り合いだけど、仲良く、さ。一緒にくっついていたいよな」

・・とうとう勢いのまま、告白までしてしまったぞ。

え?そんなの愛の告白じゃない?
でも、今の俺にはそれが精いっぱいの言葉なんだから―。きっとアイツも判ってくれる筈。


「不釣り合いじゃないぞ。世界一似合っている」


ほら。
ヴォルフの笑顔も満開の桜みたいに、いっぱいに開いたじゃないか。




(end)





なんて。頂いたコメントからの妄想文です。
「えいえいおー!」がとても可愛くて・・。

保土ヶ谷バイパスさま、本当に有難うございました(*^_^*)

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