12/30の日記

00:13
12月の忘れもの
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クリスマス文を書いていたのですが、なんとなくUPしないまま時が過ぎてしまいました。
一生日の目を見ないのも寂しいので、日記に載せることにします。

お暇つぶしにでもして頂けたら幸いです(*^_^*)







mon petit lapin, noble et sentimentale・・・


高雅にして感傷的な俺の恋人。

彼はよく言っていた。

寂しい時にはいつも、こっそりと宝箱を開けてみるんだ、と。
小さな箱から、大きな箱。豪華なものから簡単なものまで。

そうすれば、いつのまにか部屋中にいっぱい綺麗な空気が広がり、ぼくは世界一幸せな気分になれるんだって。



俺の生まれ育った国では、聖人の誕生日は恋人達の日でもある。

まちに待ったその日は、綺麗な冬晴れ。
俺は肩に力を入れて、ヴォルフを城下に連れ出した。
それは二人が付き合い始めて始めてのクリスマスの事だ。


「なあ、見てヴォルフ。眞魔国の市場にツリーが飾ってある。ちゃんとてっぺんに星ついてて。すげー」

俺の広めたクリスマス行事が、眞魔国の皆さんに浸透していくのは素直に嬉しい。

「それに、赤い、グレタが着ていたような衣装を着た人も多いな」

通りに溢れる、普段は見慣れぬ色の組あわせ。

できたてほやほやの俺達が、城下で買い物をするとの情報が事前に流れていたんだろう。
町には赤や緑。金色の星が至る所に飾られている。
お菓子店の入り口で、サンタさん人形が笑っているのも気分だ。

景色が綺麗で、いつもよりも瞳に眩しくて。
ヴォルフもきっと喜んでくれてるよな、と俺は弾むように隣を振り返る。

なのに。

「・・どうしたの、ヴォルフ」
「なんでもない、ユーリ」

アイツはずっとツリーの星に目を向けたまんま。妙に静かな雰囲気だ。
腹でも痛いのかな?

「なんでもないって・・」
「なんでもない。気にするな」
「気にするよ。お前・・」
「なあ、ユーリ。胸というのはグラスみたいな形をしているのかもしれない」

―だって。さっきから、暖かくて柔らかいものが、だんだん暈を増して来て。
いっぱいになった後はゆっくりと表面から溢れだしていくのだから―

ヴォルフはそんなセンチメンタル台詞とは裏腹、男前に口元を釣り上げる。
それから、俺の瞳の中の、更に奥を探るように覗き込んだ。

「あっ!・・えと」

一種の催促かと勘違いした俺は、慌ててヴォルフの腕を取った。

ふわり。条件反射のように、ヴォルフの白い頬に赤みが差す。

「たとえばいつもとは違う日に、ぼくだけがユーリと過ごせる権利があると思うとな」
「うん」
「ぼくは少しだけ優しくなれる。今だったら、あの憎らしい大小シマロン王達ですら天使に見える事だろう」
「利己的・・自己中。爆発しちゃうぞ、それ」
「いいじゃないか。利己的な恋というのは、良い方向に作用することもあるんだから」

そんな風な、始めてできた恋人の言葉こそが俺を有頂天にしてしまう。
てことは俺も立派に利己的な男なんだろうな。
まあ、いいや。今日は特別。
利己的でも自己満でもリア充でも良しとして。まずは大事なイベントをこなさなきゃならない。

「さーて。お前に何をプレゼントしよう。カッコ良くて・・でもシャレの利いたものがいいかな。いかにも俺が選びました!みたいなやつ」
「ああ、楽しみだな」
「それとも王道で、お前が欲しいものがいいか・・」
「ユーリ」
「ん?」
「・・・ユーリ、もしもお前がぼくが欲しいものをプレゼントしてくれるのなら」

言葉尻が澄んだ風に流れされる。
周りの人々は俺たちの存在に気付いていながらも、気がつかないふりをして通り過ぎていく。
魔王と婚約者の、初めての恋人らしい行事を温かく見守ってくれているみたいだ。

そして、通り抜ける景色の中で、俺とヴォルフはずっと二人立ち止まっていた。

ヴォルフは言った。躊躇いの所為か、何度も声を途切れさせて。

「来年のこの日も・・一緒に過ごしてくれるという約束が欲しいんだが・・」
「へ?」
「再来年も同じものを。何もいらないから、こうやって二人きりで町を歩くと約束してほしい。一緒に。・・・手を繋いで」

互いに何が欲しいか、相談をしながら。
俺は咄嗟に応える。

「ヴォルフ・・。そんなの上げられないよ。約束がプレゼントだなんて」
「上げられない・・。・・そうだな。変な事を言ってすまない」
「うまく言えないけど、それはお前からも貰わなきゃならないものだし。クリスマスに感傷なんてあげたくない」

皮肉な『運命』という奴は、寧ろ、反対を選んでしまいそうじゃないか。

「ぼくからも貰う・・?」
「ていうか!そんな当たり前の事なんて、敢えて約束出来ないっつーの!!」
「ユーリ・・」
「これから、うざくなるくらい一緒にいるんだから」

暫く返事がないと思いきや・・。

俺も馬鹿。怒られるって判ってる癖にさ。

そして、そんな俺にヴォルフはちゃんと期待にこたえてくれるんだ。

「うざくなったら困るだろう!まあ、新鮮味を喪わない様に、せいぜい努力するんだな、へなちょこ」
「それはお前も一緒だろって〜」
「あきるくらいに・・」
「うん。一緒に居るのが普通すぎるくらいに」
「空気みたいにか?」
「えー・・!空気ってあんまりいい意味じゃない気がする。俺空気って言われたくな・・」
「ユーリは空気!素晴らしいじゃないか!なくては生きていけないんだぞ。じゃあ空気はぼくの宝だ」

そう。こんな日に何気ない会話をかわして。
笑ったり、喧嘩した記憶が、かけがえのない宝物になっていくんだってコトくらい・・・。
お前の言いたい事、俺だって良く判っているよ。

俺が深々頷くと、ヴォルフラムはやっと笑ってくれた。


「・・・ユーリ。いつしか寒くて暗い夜がやってきたとしても・・。それを忘れてしまうぐらい、たくさんたくさんぼくに空気を与えて欲しい」


ヴォルフがあまりにも綺麗に笑うものだから、急に何と言っていいか判らなくなってしまう。

俺はまだまだひよこだ。見た目は一緒だけど、実際かなりの年の差カップルだ。
ヴォルフの気持ちを100%受け止めてあげられているか判らなくなっても当然だと思う。

自分がまだ過ごしてない、数十年の経験の差がヴォルフにそんな顔させてるのだとしたら。・・不安という名の黒い陰が、一気に心に押し寄せてくるのだけれど。

だけど、取り敢えずは―。


「あのさー、少しお腹すいてきたから、角の店でお茶とケーキでもしない?」

俺はヴォルフの体を自分の方に引き寄せた。
ちゃんと腰に手を回して。

通りを曲がった所に二人のお気に入りカフェがある。そこで温かいお茶と、甘いクリスマスケーキを御馳走してあげる事にしよう。

「ああ、いいな!あんな大きいケーキは全部食べられないかもしれないが。頑張ってみよう」
「・・残念なお知らせ。多分心配しなくても一人分にカットされてると思うよ。ま、気分気分!」


俺とヴォルフは景気良く靴底を鳴らし、再び町を歩き始める。
いつのまにか、互いの冷たい指を絡ませながら。

そうして、二人で、かけがえの無い宝物を積み重ねていくんだ。



(end)





今年の後半は波乱万丈でした。色々ありまして、酸素が欲しい状態だったのは私です(^_^;)

来年はどうなるんだろう。予想がつかないです。
楽しいコトだったらいくらでも想像できるのに。

でも、とりあえずは年末ですね!

一年があっという間すぎて怖い・・。

また大晦日あたりに、一年のご挨拶も兼ねて、日記を書きに来たいです(*^_^*)

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