11/01の日記

00:14
始まりの朝(ヴォルフ)
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日曜日には家に帰って、来るべき一週間に備える。
これがぼくとユーリの信条だ。

だけど、そうそういつも予定通りに事が運ぶ訳でも無くて・・。


「は・・・今何時だ!ここはどこだ・・?」

あまりの肌寒さに、夜中目が覚める。
ぼんやりする頭を働かせてみれば、確かに今は日曜日の夜中の筈だ。

ぼくは目黒の家で寝ているのか・・?
だが、いつも毛布に包まって寝ているのに、どうしてこんなに足元が寒いのだろう。
そして、どうして何も身につけてないのだろう。

「・・ん?ヴォルフ起きたの・・・?」

背後から声がして、体を反転させる。
と、ぼくと同様、すっぱだかのユーリが寝転がっていた。

彼も布団をかぶっておらず、つい数時間前は何度も泣かされた急所も、今は大人しくなっている。
丸められたティッシュが虚しく目に映った。

「起きたが・・ユーリ。今は夜中の一時だぞ!」
「あー・・そっか。お前がイった後俺も急に眠くなっちゃって。寝たんだな・・」
「寝たんだな・・じゃないだろう?どうするんだ。こんな時間!」
「今から家に送るのもなんだしなあ。・・・うーん。ゴメンなヴォルフ」
「いや・・すまない。寝てしまったのはぼくも同罪なのだが」
「じゃあさ。もっかい寝なおそう。ほら寒いからもっと近寄って。電気も消さなきゃだろ?」

もはや覚醒する気が全く無いユーリは、ぼくを自分の胸に抱き寄せた。
ひんやり冷たい肌が頬に当たる。
そして髪に口づけを落とされた後、揃って布団をかぶり直すぼく達。

ああ・・!これは覚悟を決めろと言うことか。

明日の朝は、何時の電車に乗れば会社に間に合うんだ?
ていうか目覚ましはセットしているのか?

色々考えだすと、頭と目は急に冴えてくるもの。
ぼくは暗闇の中、早速寝息を立て始めた男の胸の上で悶々としながら夜を明かしたのだ。


そして、否応なく翌朝はやって来る。


ユーリは携帯でアラーム設定をしているので、ちゃんと起きることが出来た。
時間節約の為に二人一緒に風呂に入ったり、果てしなく慌ただしい朝だったが・・・。

ユーリの家に置いておいたウニクロのシャツと、金曜日着ていたスーツを身に付けて。
朝のラッシュの少し前。
ユーリの駅は首都圏の少し先にあるせいか、車内にいる人は決して多くない。
皆心なしか眠そうな表情をしていた。

「あ、奥の、あの辺に座ろうかな」
「・・じゃあぼくは前の方に行こう」

ユーリが奥の席に向かったので、ぼくは別の車両に移ろうと、合図を送った。
だって、会社での知った顔が乗って来るかもしれないんだ。
注意をしすぎるくらいでちょうどいい筈だろう?

だが。こういう時は、案外ユーリの方が大胆なのが常のパターンだ。

「おい、ヴォルフ?どこいくんだよ。早く隣座れよ」

ユーリは瞬時にぼくを引き留め、ついでに手を引いて横に座らせた。
隣に人はいないのに。随分と体を密着させてくる。

「でも・・誰かに見つかったらどうするんだ。総務の義油田部長はこの線を使っているらしいぞ」

焦ったぼくは、乗客の顔を念入りにチェックしてしまう。

ああ、嫌だ。
またもやぼくの方が小心者じゃないか。

『いつだって。何がきっかけで。ぼくからユーリが離れていくか判らない』

なんて事を、常日頃考えてしまうぼくは、小心者にならざるを得ないのだから。

「別にいいじゃん。そんときはそんとき。適当に誤魔化してれば大丈夫だって」

呑気な笑顔を浮かべ、ユーリは携帯を弄り始めた。
コッソリ覗けば、ニュースチャンネル。

まあ、ゲームでないだけ良しとするか・・・。

小さな溜息を付きつつ、ぼくは自らも携帯を取り出した。
そういえば昨夜、コンラートに外泊すると伝えていなかったのだ。

今更メールをするのは恐ろしいが、しない方がもっと怖い。

だがそれ以上に、会社でユーリとぼくの髪から同じ香りがするのが、怖くもあり快感でもあったのだ。

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