ほん

□憂鬱な王子
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まばゆいばかりの黄金の髪。
湖底を思わせるエメラルドの瞳。
白磁よりも透き通った白い肌。
そして薔薇の蕾を思わせる唇。

人は口々に僕の容姿を褒め称える。

僕は物心ついてからずっと、その台詞を聞き続けていたので別段自分の容姿について感慨はなかった。

皆がそう言うからそうなんだろう・・・。
その程度のもので。
綺麗な自分なんて名前と同じくらい当たり前の感覚だったのだ。


*


「曲者ー!!」
廊下ですれ違いざまにギュンターから指をさされた。
曲者はお前の方だろう。

「お前、とうとう汁で頭を汚染されたのか。失礼なヤツだな」
僕はその言葉をギュンターに向かって吐き捨てるように言った。
その時妙な違和感が・・。

ん・・?なんだ?
風邪でもひいたのだろうか。
声がいつもと違う。
しゃがれて・・そう、ダミ声になっている。
喉は痛くないのに絶対に変だ。

ギュンターは目を剥いてさらに続ける。
「一体何なのですか。あなたの服はヴォルフラムの物ではないですか。彼をどうしたんですか!!」

「ホントにお前は妙な事ばかり言う。僕がそのヴォルフラムじゃないか!」

ギュンターは、もう汁が泡になるくらいに激しく僕をののしった。

「いいかげんになさい!あなたヴォルフラムの顔を見たことが無いんですか?もしあればそんな無礼な事を言えない筈です!」
「ほ・・ほんとに何を言ってるんだ?ギュンター・・」
「もう一回自分の顔をじっくりと見ることをお勧めします。その醜い顔を!」

はあ?
醜い・・?
僕は記念すべき初めての言葉をギュンターから捧げられた。

その時ふとある事を思い出した。
きっとあのせいだ・・。
僕は素早く踵を返して自分の部屋に走っていった。

「こら!お待ちなさい!どこへいくんですか〜!」

所詮年寄りには僕を捕まえられる訳がない。
僕はもの凄い勢いで自分の部屋に飛び込み、大慌てで鏡を覗き込んだ。

「やられた・・・!」
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