ほん

□ふりふりフリル
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かわいい声が俺におねだりをする。

「ねえユーリ。本を読んでよ。新しいアニシナシリーズ!」
「うん。いいよ。持っておいで」
「わーい。ありがと」

本を取りに走っていく娘の姿に頬を緩ませる親バカ一人。
その名は渋谷有利。俺の事だ。

ただ今グレタは、留学先のカヴァルケードから春休を利用して俺達の元に帰って来ている。

滅多に会えない愛娘から忘れられないように・・。
「久々の帰国の機会に、親子の絆を深めておきたい!」
そう考えた俺は、ヴォルフとグレタの親子三人水入らずの宵を過ごすことにしたのだ。

俺は既に寝巻きに着替えて、楽しい夜を待ち構えている。

・・それにしてもヴォルフ遅いな。

なにか忘れ物をしたとかで部屋に取りに行ってから戻ってこないんだけど。
まさか途中で暴漢(コン・・いやなんでもない)に襲われ・・・。
大変だ!

俺が妄想で青ざめているとちょうどヴォルフが扉を開けて寝室に入って来た。

「ヴォルフ〜!良かった。危ない所をよくぞご無事で!」
「自分の寝室に夜着を取りに行くだけで何の危険があるんだ」
冷たく言い放ちヴォルフは箱をポンとベッドに置いた。

忘れ物っていうのはきっとこの中に入っている夜着の事なのだろう。
ちょっと興味が沸いてきて中を覗いてみる。

「うわあ・・!」
「新しい夜着だ。いい機会だから下ろそうと思って」

箱の中から出てきたそれは、純白でフリルいっぱいのとてもロマンチックなシロモノだった。
まるでおとぎ話のお姫様が着ていそうな・・・。

「は、早く着てみてください。ヴォルフラムさん・・」
みっともなくてもいい。男は正直に生きるものだ!
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