ほん
□眞魔国決戦
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眞王は、泉に映る自分の姿をじっと見つめていた。
ゆらゆらとたゆとう金色の光。
頼り無く実態のない影のような姿。
水面が揺れるたびに自分の姿も消えたり現れたりする。
それは仕方の無いことだった。
なぜなら彼の肉体はもう4千年も前に滅んでしまっているから・・・。
「いやなものだな。こんな姿は」
以前は当然の事として受けとめていた事実が最近どうしても物足りなくなってきている。
それはいつの頃からだっただろう。
眞王にはわかっていた。
それは「村田健」と出会ってから感じ始めた、焦燥感とせつなさ。
彼の漆黒の瞳を見ては大賢者を思い出して心乱れ、その上今目の前に現れた村田健には、かつての恋人とは違った感動を与えられる。
いつも新鮮な空気を届けてくれ、生命の美しさを教えてくれるのだ。
ああ・・。彼は今この時を生きているのだな。
眞王は堪らなくなって泉のそばを離れた。
自分も彼と同じ様にこの空気を吸ってみたい。
そしてできればあの頃のように、お互いの暖かさを感じてみたい。
手をつなぐだけでもいいんだ。
「・・・まあできれば口付けぐらいまではもって行きたいが」
眞王は大それた夢をみる。
そしてひとつの答えを導きだした。
いるではないか。俺にそっくりな、形代となり得る器が!