ほん
□君との思い出と月
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「やあ。また来たよ」
「お前最近ほんと良く来るな」
ここは眞王廟。
物騒な箱が安置されている部屋だ。
そして僕の目の前には優しく微笑む眞王がいる。
「だって箱が無事か見なきゃいけないし、それに」
「それに・・?」
「ちっちゃな君がすごく可愛いから」
僕は笑いながら君を抱き上げ肩に乗せた。
「もしかして笑いモノにしてるのか。これはこれで便利なんだぞ」
「わかってるって」
僕はうれしくてしようがない。
だって君は最後の闘いで、宗主に飲み込まれて。
予定通り渋谷に斃されてしまったから。
もう二度と会えないと思ってたんだ。
四千年の大賢者の思いはなかなかシツコくて、ムラケンとしても手こずっているところだ。
「お前は変わらないな。相変わらず俺に意地悪だ」
その言葉に僕はちょっと反論したくなる。なるほど僕は意地悪だ。
「僕は村田健だよ。君の大賢者じゃないんだ。僕を通して大賢者をみるのはやめてほしいな」
「う・・。それならお前こそ。俺に構うのは大賢者なのかムラケンなのかはっきりして欲しいものだ」
君も痛いところをついてくるよね。
たしかに大賢者だった僕は君が全てだったけど。
今の僕も君がとても好きなんだ。
・・・とは意地悪な僕はいってやらないけど。
「まあ、複雑な関係、複雑な思いってね」
「そうだな・・・」
僕達はそれから中庭にでて一緒に金色に輝く月を見たんだ。
あの頃とちっともかわらない真ん丸い月を・・・。
(end)