ほん
□はちみつ道中記
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僕は今、ユーリと手をつないで眞王廟にある泉の前にいる。
二人とも濡れてもいいような軽装で、僕の荷物は幾重にも包装が施されている。
地球ではコイビトの家を訪問するときは「手土産」がいるらしいから、真魔国名産の酒や菓子などをいくつも持って行く事にしていた。
スタツアとやらの途中で失わないか不安だが・・・。
「・・・。ごめん。ヴォルフ。こんな事になってしまって・・・」
「何を謝ることがあるんだ、ユーリ。僕もお前の両親に挨拶しなければならないと思っていたからな。ちょうど良い機会ではないか」
さっきからユーリはずっと謝りっぱなしだ。
それだけで、僕がこれから地球で受けるであろう仕打ちが想像されてしまうのだが・・・。
このへなちょこはそれに気がついていないようだ。
「アニシナさんの魔動翻訳器‘ボキャ貧困君’は忘れてない?」
「・・・ああ、大丈夫だ」
いいかげん腹が立ってきた。
「・・・そろそろ行くぞユーリ。皆も呆れていたではないか」
ギュンターや兄上が見送りに来てくれてたはいいが、ユーリがあまりにぐずぐずして出発しないのでもう血盟城に戻ってしまっていた。
「俺はまだここにいますよ」
爽やかに微笑むコンラート。
「やっぱり二人だけでは心配だな。護衛として俺が付き添いを・・」
コンラートがそう言いながら近寄ってきた瞬間。
「行ってきまーす!!」
ユーリは僕の手をぐいっと引っ張って泉の中に飛び込んだ。
もの凄い水流に体がバラバラになりそうだが、ユーリが僕の手を必死に掴んでくれている。
僕を守ろうとしてくれているんだな。へなちょこめ。
そうして不安と期待が入り混じる中、僕達は地球に向けて勢い良く流されて行った。