別冊(Req)

□ヘーカと、ボクと、時々、ワンコ
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「ウェラー卿というのは、噂では夜の帝王らしいな・・きっと奴のテクに、お前の婚約者もメロメロなのだろう」
一人で歩いているはずの耳元でいきなり囁かれて、ユーリは慌てて後を振り返った。

「誰もいない・・・」
「こら、そんな乱暴に動かれると落ちるだろうが!」
「ひえっ!」

自分の右肩には、いつの間にか妖精さんが乗り移っているではないか。はたまたぶーんと飛んできたのか?

「あ・・あんた、村田の肩からいつのまに移動したんだよ」
全然気付かなかった、と呟くユーリ。

「お前が鈍感だから気付かなかっただけだ。・・実は俺と大賢者で、お前にいい方法を授けてやろうと思ってな」
「いい方法?」
「大賢者の言ってた事だ。えーと。それはだな・・。お前のじゃじゃ馬飼い主に少しおしおきはしたくないか?」
「そりゃ、したいけど。でも可哀想なことは絶対にやだ」

こんなんだから、舐められるのだ。
ユーリの浮気は許さないけれど、僕の浮気は許される、という方程式が簡単に成り立ってしまう。
眞王は不甲斐なさにコッソリ溜息を吐く。

「これは男の沽券に関わる問題だぞ有利。犬なら一度くらいガブリと噛み付いてやれ」
色々語弊のある台詞だ。
犬は人をむやみに噛まないし・・。
「噛み付く?俺、痛いことすんのやだってば」
「痛くは無い。むしろ気持ち良い事だ」

笑顔大サービスの爽やか眞王に、妙な胸騒ぎを感じるユーリだった。







「―で。俺と上様がなんで同時に出現してるワケ?」
へなちょこユーリの横には長髪のユーリが大儀そうに首をコキコキ鳴らしている。

膨大な魔力を使い果たして、二人を分離させた眞王。
さっきよりさらに小型化してしまった。

「そ・・・それはな。お前一人ではヴォルフラムを満足させられないなら、二人がかりで仕込めばいいと考えたのだ」
ゼエゼエ・・。気の毒に。
「誰が考えたって?」
「大賢者だ。まあ、大賢者は自分と有利で、と思っていたようだがな」

てことは・・。
村田とユーリで3ピーって事で。

「冗談じゃない!俺のヴォルフラムの体を俺以外に触らせるもんか!」

ぶっ殺してやる!
村田に一言文句を言う為、元来た道をバックしかけたユーリ。
そしてその袖を掴む者。

「だから、渋谷有利を二人にしたのであろう。良い良い。せっかくの妙案、楽しませて貰おうではないか」
上さまが頬の筋肉を上げて笑うと、なぜかニタリという擬音が聞こえてくる。

「悪い方向に行きかけた婚約者をしっかり導くのが男の務めであろう」
「そりゃそうだけど・・さあ」
「今宵、余とそなたでみっちり教え込むのだ。・・あの白い肌に」

上様は嬉しそうだが、ユーリは心中複雑だった。
先ずはヴォルフラムに嫌われたらどうしよう、という心配と・・。
それから、自分ではない男にヴォルフラムが抱かれるシーンを直視できるか、だ。

(・・まあ、自分は自分だから大丈夫か。俺が二人がかりでアイツを・・やべえ!)

想像しただけで、早くものぼせて来そうだ。
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