別冊(Req)
□ヘーカと、ボクと、時々、ワンコ
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付き合うってさ。
とりあえずは放課後一緒に帰るだろ?
たまに寄り道してドリンクバーで三時間くらい粘ってみて、さ。
休日は遠足を決行したりとか?
そしてその後、俺の部屋に連れて来て・・。
当然の事ながら蕩けるように交わるもんだ。(ここ大事!)
そんなんだろう?普通は。
多分・・良く知らないけど。
〜ヘーカと、ボクと、時々、ワンコ〜
「なあ村田、ヴォルフどこ行ったか知らない?」
ユーリは一時間程前から、懸命にヴォルフラムを探している。
別に好き好んで鬼ごっこをしている訳じゃない。
「んー。フォンビーレフェルト卿?多分彼の二番目のお兄さんと一緒にいるんじゃないの?」
二人が廊下を歩いていくの見たからね、と肩を竦める村田。
光る眼鏡の向こうには、同情に満ちた瞳が見え隠れして少々ウザイ。
「くそ・・・コンラッドめ!またしても先を越されたか・・!」
ユーリは怒りの余り、額に稲妻そっくりの青筋を立てた。
ピキピキガラガラ・・。
耳を澄ませば音まで聞こえたりして。
それはさておき。
「なあヴォルフってさ。・・本当はコンラッドの方が好きなんじゃないかな。俺はリアル隠れミノなのかも・・」
「あれ、渋谷?君にしては随分マイナス思考だね」
それはマイナス思考にもなるはず。
実際付き合いだしてこの方、振り回されているのはいつもユーリの方なのだ。
初めはヴォルフラムの方が押せ押せで、逃げる自分を追いかけて居たはずなのに。
ユーリが彼への恋を自覚したとたん、いつの間にか立場が逆転。
仕事や、訓練で忙しいヴォルフラムの時間が空くのを待ち、キスをしてくれるのを待ち、そしてエッチをしてもいいといってくれるのを待つ毎日だ。
その都度尻尾をブンブン振ったり、しょんぼり垂れたり、全くやってられらない。
「たく、俺は犬じゃねえっての。ふざけんなよ!」
「べっつにいいんじゃない?君の有利な駅前にある犬の像っぽくて」
「なんだよ。俺がハチ公だっていうのかよ」
「どっちかと言うとモヤイには似てないからね。でもさ、たまには飼い主に反抗してごらんよ。狂犬になってガブって噛み付いてみれば?」
あまりの雑言に反論しようとした時、村田の肩に乗っている妖精が口を開いた。
「そんなに怒るな有利。お前の魅力が足りないのだろう、もう一人のお前に比べて。・・セックスアピールが」
村田の肩の上の妖精、もとい小型の眞王がユーリを揶揄し始めたのだ。
二人がかりとはなんと卑怯千万。
「眞王、あんたさー。ジェネウス騒ぎの時、上様に庇われてからちょっとへんじゃね?上さま上様・・」
今度はユーリが仕返しする番だ。
「は?何を言う。俺のイメージが壊れるだろうが!俺はあくまでも女好きで、その実ちゃんと妻を愛し・・・」
「ふーん。ならいいじゃん。俺と上様のことはほっといてくれよ。二度と比べないでよ」
「勿論だとも。もう二度と彼の話題は出さないから、誤解はちゃんと解いておけよ」
眞王は本気で怒っているようで、顔が真っ赤だ。
小さな面積なのにはっきり判るくらいまっかっか。
「プチトマトみてー、可愛い。ま、いいや。どうもお邪魔さま〜」
「頑張ってね。ハチ公!」
「おー!」
二人に用の無くなったユーリは踵を返して、婚約者を捜し続ける事にした。