別冊(Req)

□最高の淫薬
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建物の中は思ったよりも広かったけれど、やっぱりシンプル。
丸いテーブルと椅子しか置いて無い。
それでも、通り雨をやり過ごすには充分すぎる内装だ。

なんといってもここには今、ヴォルフがいる。

「こらユーリ!上着を脱ぐから、シャツがびしょびしょじゃないか。風邪引くぞ」
本当にへなちょこなんだから、と余計な一言も忘れない。

「大丈夫だよ。これくらい。普段鍛えてるからさ」
心配されるのが、妙にくすぐったかった。

ザーザー本降りになった雨の湿気も手伝って、どこからか甘い匂いが立ち上っている。

お菓子の・・?
いや、違う。ヴォルフラムの体から出ている香りだ。

「大丈夫じゃない。お前が風邪をひいたなんてなったら、責められるのは僕の方だ」

怒った声とは裏腹に、指使いはあくまでも滑らかだった。

ヴォルフラムが俺のシャツの前ボタンをゆっくりと外し始めたのだ。

「ね、ねえ・・何してんの?ヴォルフ?」
「お前が病気にならないように、服を脱がせてやってるんだろう。へなちょこ王様の為に!」

俺はなんだかそれ以上は言えず、黙ってヴォルフラムにされるがままになっていた。
さっきから漂っていた甘い香りはむせ返るほど強く感じる。

指が。
俺の腹筋の上をするっと這った。

「・・本当だな。お前は鍛えているだけあって、固くていい筋肉をしている」
「・・ヴォルフ・・・」

その直後、俺の体にはある異変が起こった。
今までの俺からは考えられない、ある徴だ。

これはまずい、とすぐに隠そうとしたが、目の前に居るヤツにはあっけなくバレてしまった。

「どうやら固くなってるのは筋肉だけじゃなさそうだな・・」

俺の下半身をじっと観察した後、顔を上げたヴォルフラムの瞳は濡れていた。
雨の雫のせいなんかじゃない。

翠はさらに艶を帯び、滑る様な輝きで俺を煽る。

「こっちも・・脱がせてやろうか?随分窮屈そうだぞ」
「あっ・・ヴォルフ!やめ!」

白い指が前ボタンをはずし、ジッパーを下ろす。
そして、すでに主張している俺自身を優しい手付きで取り出したのだ。

「もう・・。なにやってんの?ヴォルフってば!恥ずかしいじゃん!」
「ユーリ。僕はお前に婚約者らしい事を何一つしてやれなかった。だから最後くらいはな」

最後くらい婚約者らしい事をする?
突如沸いた性欲の処理をしてくれるとでもいうのだろうか。
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