09/09の日記

23:22
お楽しみはこれから!
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結局ヴォルフラムを自宅前で拾ったのが16時半くらい。
晩ご飯には少し早い時間だった。

夕食までの時間つぶしに映画でも見ようかな・・。

でも、映画だとお互いの視線が合わないし、会話だって限られてくる。
貴重な時間を、勿体なく一人で潰すようなものかもしれない。


「さてさて、どこに行きますか」

俺は浮き立つ心そのままに、軽々とアクセルを踏んだ。

「どこでも・・」

ところがどっこい。
ヴォルフラムの表情が一転、ドロドロ効果音が聞こえて来そうな曇りっぷりだ。

車に乗る寸前はあんなにも機嫌がよさそうだったのに、一体何がどうしたのか。

「ん?車の中がどうかした?」
「いや、なんでもない・・」

助手席のヴォルフラムを見ると、ボトル入りのガムを手に取っていた。
中身がキューブ形のそれは、南川さんが運転中眠くならない様にとコンビニで買ってきてくれたものだ。

コロンと四角く、可愛い物体。
南川さんみたいにカラフルだ。

「あ、そのガム、食べていいよ!包み紙は中に入っているから」
「お前がこの手のモノを食べるとはな。ソーダ味か・・妙に甘い匂いがする」
「・・うん。初めて食ったけど。甘くて結構美味いよ」

白金に光る空の向こうには、積乱雲が見える。

そして俺はと言えば、昨夜は一緒に寝たというのに、なんだかやっと二人きりになれた気がして・・。
ほっとするやら、テンションがあがるやら。

別荘では常に周りに人がいたから、落ち着かなかった所為もあるけれど。

「ああ、そうだ、ユーリ。買い物などの用事に付き合ってやってもいいぞ。今週はまだ行ってないのだろう?」
「そうだなあ。うん。レンジご飯とか買い置きしときたいし。新しいYシャツも欲しいから・・付き合って!」

やっと進行方向が決定した。

スーパー、イオンカルフルだ。

スーパーっていっても、主婦っぽいと侮っちゃいけないぞ。
食料品は勿論、衣料品や雑貨、はてはサラリーマンの友、ウニクロまで入っているというすぐれものなのだ。
そして東京は落ち着かないから、埼玉方面のイオンカルフルに車を走らせてみる。

遊んだ後は夕食を一緒に食べて。
そして出来る事なら、二人同じ家に帰れればいいのに、なんて思いながら。



「いいのはあったか?」

帽子を試着して遊んでいたヴォルフラムが、俺の所にやってきた。

ウニクロの店内は、さまざまな人が目当ての服を物色している。
夏物はもう、セールになっていた。

「うん。折角だから何枚か買っておこうかな〜。これなんてどう?」

俺は使い勝手の良さそうなYシャツを手に取った。
残業の多い俺は、アイロンを掛けなくてもいいタイプがお気に入りだ。

ヴォルフラムは別。
アイツは布から仕立てたものを着ていて、お手伝いさんがアイロンを掛けてくれるらしいから。

「ほらシンマのプリンス、お前はこんなの着た事ないだろ?」

俺は徐に、ヴォルフラムの首元にシャツをあてててみる。
襟元にボタンの飾りのあるシャツは、眩い王子様にも似合う代物だった。

「買った事はないが・・」
「へえ、意外!!お前カジュアルなのも結構似合うな!」
「そ・・そうか?に似合うのか?」
「うん。いつもと違う雰囲気で、凄く新鮮っていうか・・」
「新鮮?刺身みたいなものか!」
「刺身というよりも・・。うーん、ミッション系の学校に通う学生みたいでカンジ良い・・っておい、ヴォルフ?」
「ユーリが買わないなら、ぼくがそのシャツを買うぞ!」
「お?別にいいけど」

いつも上質なコットンを身にまとうシンマの蜂蜜王子は、俺からシャツを奪い取るや否や、一目散にレジに走った。

一枚2980円のシャツ。
コンラート課長に怒られやしないだろうか。
『あまり安いのを着るなよ』って。

だが、そのカジュアルなシャツはヴォルフラムが俺に歩み寄ってくれる証なんだ。

別にアイツは無理をして合わせているワケじゃなくて。
俺と一緒に居ることで知る、新しい世界を楽しんでくれている。

例えば、コンビニのおでんや白獅子球団だってそう。

俺のほうは、残念ながらアイツに合せられる程の金も知性もないけれど・・。
それでも、ベルリン国立歌劇場の指揮者は好きになった。

こんな風に二人が一緒に居る事で、世界がどんどん広がるなんて、凄く素敵だな。


「さあ、飯いくぞ!ガッツリ食おうぜ!」
「ああ!ぼくもさすがに腹が減ったぞ!」


だがしかし駄粕・・。

この後、二人の未知への探究心は、あらぬ方向に暴走することになるのが。

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