言の葉あ遊戯、
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「っ……はぁ…疲れた。とてつも無く疲れた。私の努力を返せー」
1人虚しく学校の門をくぐって道路へと出た。夕飯の時間帯なので人通りは少し少ない。早く帰らないと焔乃と首無にグチグチ言われるぞ、とお説教を想像しながら身震いした。が、それよりも酷い悪寒が背中を駆け巡り体が恐怖で被われる。この悪寒は、そう、朝と似ている。それにさっきのとも
「……………」
カナちゃんの危機を予感する悪寒では無かったのか?じゃあ、いったい…何なんだ?
「やぁ、こんばんは」
「っ!?」
耳元で囁かれた言葉に私は勢いよく振り返りながら後方へと下がった。目の前にはどこかの制服を身に纏う長身の男の子と同じ制服を纏う……犬?いや、人間だから犬ではないか。いやでも犬っぽい?……まぁ、犬が私を見下ろしていた
てか今、気配しなかった、よ…ね?いや、気配すら無かったよね。とりあえずどう返事を返そうか考えかねていれば男の子が胡散臭そうな笑みを浮かべながら口を開いた
「君は、如月琴美さん、だよね」
疑問系ではないその言葉に私は2歩下がる。この人たち…敵、なのか
「……………」
「その翡翠の瞳、隠しきれていないその力。その力は…僕と同じだね。流石、本家の言霊だ。神通力も桁違いだ……あぁ、そう言えば能力の開花は始まったのかな?」
コイツ敵だわ。100%敵。コイツに能力の開花が始まっている事は言っちゃいけない気がする。いやそもそも神通力の事を言ったら駄目だと思う
「神通力?能力の開花?…なに、それ…」
「おや、君は親から知らされていないのかい?自分の能力について」
「知らない、なにそれ…そんなの私は知らない」
咄嗟に出た嘘だがコイツに通用するのか?不安だらけだが知らないと首を振りながら男の子を見てみれば意外そうな顔をしていた。おぉ、私結構演劇とか向いてる?
「そうか…君は知らないのか……可哀想に。君は自分の力を持て余しているんだね」
そう言って私の頬に触れようとした瞬間──
「このお方に触るな」
視界が遮られた。いや視界は良好だ。男の子と私との間に誰かが割って入ってきたのだ
「──ひ、いの…」
勿論、その誰かとは焔乃であって、私は知らず知らずのうちに肺に溜めていた空気はゆっくり吐き出した。焔乃はチラリと私を見てホッと息を吐く。私が無傷だったから安心したのだろう
「邪魔が入ったね」
「お前たち、何者かえ?」
警戒する焔乃の後ろから男の子を見れば薄く笑いながら肩を竦めている
「僕の名前は玉章。いずれこの地の畏を従える者だ。どうだい?僕の百鬼に…いや、隣に来ないかい?」
「…──は?」
「奴良組なんかよりも君の力を最大限に生かせるよ。君だって自分の力がどれほどの物か知りたいだろう?」
「貴様、っ!」
「私は行かない。あなたの言の葉に感情がないもん」
そうキッパリ言えば焔乃が私を見ながら黙りこくった
「矢張り、力の使い方が分からなくても言の葉は分かるんだね。益々気に言った」
そう言って笑う玉章に私は僅かに眉を寄せる
「君の答えを尊重しようと思ったけど止めるよ」
それは有り難い。さっさとどっか行け
「次会った時は、君を必ず連れて行く」
「…あ?」
じゃあね、如月琴美さん。と踵を返した玉章。その後ろをついて行く犬は私はチラリと見た。何か言い出そうな顔をしていた彼だが前を向いて去って行く
「主様、お怪我は!?」
「無い。精神面以外」
「お助けするのが遅くなってしまい申し訳御座いません」
腰を折る焔乃に苦笑しながら良いよ、と言った瞬間──頭に強烈な頭痛が走り、私の体が膝から崩れ落ちた
「─っい!…ぁ、っ」
「主様!?主様っ!」
111229 りん汰