言の葉あ遊戯、
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「………なんて、素晴らしいマイナスイオンなんだろうなぁ」
「現実を見て下さい、主様」
「………………」
かれこれ2、3時間は経っている。山道を登っているのだがみんなとは出会えず空は暗くなり辺りは真っ暗になった。焔乃は人型を取って私の隣にいる。そして私の足元にはオレンジ色の火の玉が前と後ろに1つずつ。ふらり火の特性で出してもらったのだ
「頭痛はもうよろしいのですか?」
「まだ痛いけどさっきよりマシ……ん?」
階段を登っている足を止めてクルリと後ろを向いた。暗い道が続くだけで何もないそこに違和感を感じる
「妖気が近づいてくる」
「えぇ…ここら辺、やけに妖気が多いですから誰とは特定できませんね」
ザッと焔乃が前に出た。近づいてくる妖気に嫌な汗が流れる
「焔乃…ここ、やっぱりヤバいよ。逃げよう」
「…主様?」
新幹線の中で見た夢が脳を掠めて手が震えた。血がたくさん、あったのだ。嫌な予感がする。咄嗟に焔乃の手を引っ張って永遠に続きそうな石階段を走り登った
「っ、は…はっ」
「大丈夫ですか?」
まだまだ続く階段に足をゆっくりと止める。汗1つかいていない焔乃は私の顔を覗き込みながら聞いてくるので額についた汗を乱暴に拭いとりながら頷く
「……琴美?」
「きやぁぁあああ!?」
「うわっ!──ってリクオ殿?」
ポンッと後ろから肩を叩かれて叫んだ。バッと後ろを向けば氷麗ちゃんを横抱きにした夜のリクオ君がいた
「な、んだ…リクオ君かぁ。驚かせないでよ」
「わりぃな。それよりも琴美はどこをほっつき歩いてたんだい?心配したんだぜ」
「色々あったんだよ」
ははは、と遠い目をしながら乾いた笑みを浮かべたら意味が分からないと言った風にリクオ君が首を傾げる
「ところでリクオ殿。雪女はどうしたんだえ?」
「ん、あぁ。こっちも色々あってな。怪我してるから、こいつを安全な場所に置いていってから、主犯者に話つけに行くんだよ」
「……………」
「…琴美?」
まさか…牛鬼、とか?夢の背景からしても、捩眼山がピッタリだけど……今私がここに居るという事は未来は何一つ変えられなかったていうこと。氷麗ちゃんの怪我も私が迷子になっていなければしなかったかもしれない
「琴美!」
「!…え、なに?」
「…いや、呼んでも返事がなかったから心配したんだよ。まだどこか調子悪いのかい?」
「ううん。もう大丈夫だよー。すこし考え事してただけ」