言の葉あ遊戯、

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また負けたぁああ!と叫ぶ清継君たちに苦笑しながらボクの膝の上に頭を乗せて眠る琴美を見下ろした。三席掛けの席を二席使って眠る琴美の顔色はあまり良くない。朝起きた時は元気そうだったのに、と柔らかい髪質をした髪と頭をゆっくり撫でた

通路側に座る僕の前には花開院さん、隣には雪女、基つらら、カナちゃんと言う順番だ。通路を挟んだ隣側の席には残りの4人が座っている。周りを見ながら、またカードを一枚捲って額に当てる

「せーの!」

そのかけ声に合わせてカードを簡易机の上に叩くように置いた








***



─いいよ、みんな。さっさと片付けちまおう─

─逃げてぇー!若ー!─

─知ってたよ。自分の、こと…─

─あぁ。やはり来られましたか…─

─お前を殺して……オレも、死ぬのだ─





「っ、はっ!」

ガバリと勢い良く起き上がった私は額にべっとりとついた冷や汗に驚いて、服の袖口でそれを拭きとった

「琴美!?どうしたの?すごい顔が真っ青だよ」

「っは、…は……だ、だいじょーぶ」

振り向けば心配そうな顔をしたリクオ君と向かい側では三人が吃驚したようにこちらを見ていたのでへにゃりと笑ってみせようとしたが上手くいかずきっと苦笑いになってるだろう

「………何か買いに行くけど何が良い?」

「っ、……え?…あ、あぁ。私はオレンジジュースが良いなぁ」

「ん、分かった」

立ち上がって買いに行ったリクオ君を後目に私は自分の手の平を見つめながらギュッと握る。さっき見た夢は妙にリアルだった。正夢になりそうなほどリアルで嫌な夢

「まさか……能力の開花がはじまった…?」

言霊は大人に成長するにつれて、神通力が駆使できるようになる。大概の神通力は未来を視る能力なのだが、能力の開花と共に言の葉も力が増して人を操れるようになるのだ。故に人間や妖怪などに狙われやすくなる

言霊って損な役割だよなぁ、と未だにバクバクと波打つ心臓を落ち着かせるように大きく深呼吸をした。あの夢は何だったのだろう。牛鬼とリクオ君、氷麗ちゃんに見覚えのある2人……これから一体何が起こるのだろう、と知らず知らずのうちに震えていた右手を見てギュッと握った。旧鼠の一件で手首には包帯が巻かれていて今も熱を帯びたように痛いそれは妙に、あの夢はリアルだよと言っているようで眉を寄せる

「………………」

大丈夫、大丈夫。自分に言い聞かせるように胸の内で何度も何度も呟いて無理やり納得させる

「……琴美?」

勿論、リクオ君がこちらを心配そうに見つめていたなんて私が気づくはずもなかった




111101 りん汰

 

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