言の葉あ遊戯、

□06
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カコーンと鹿威しが鳴った。座布団に座ってお茶を啜る私の前で鴆は苦笑を零しながら私を見つめる

「すまねぇな」

「あ?…何がー」

「俺の命が残り少ないだとか色々聞かせちまってよ…」

「あぁ…良いよ。気にしてない」

笑った私に鴆は眉を寄せて自分の手の平をギュッと握った

「やっぱり…リクオは継がねえの、か」

「……何とも言えないよ。私はリクオ君じゃないもん」

コトリと置いた湯飲みから手を離して袖口に入れる。残り少ないからこそ、短い命を奴良組の為に使いたいと言っていた彼の先程の言葉を思い出しながら溜息を零せばそれに気づいた鴆がどうした、と聞いてきた

「待っててやってよ」

「だがよぉ…俺は──」

「お前は“生きる”よ」

「!…無茶言うぜ」

「無茶じゃないさ。私が“言う”んだ。直ぐには死なないよ」

「お前…まさか──」

「こんなサービス、滅多にしないんだからねー」

ウインクを一つ飛ばせば鴆はくしゃりと顔を歪ませて頭を下げてくる。私の今やった事を理解したのだろう

「お前には適わねぇな。感謝するぜ」

「リクオ君の義兄弟になる人だもんね。これぐらいどって事ないけど、無理な運動とかしたら縮むから」

寿命が、とは言わなかったが鴆はそれを理解したのか小さく頷いてみせる

「でもお前、こう言う世の理に触れる事は出来ないんじゃ…」

「生と死に関してだけだよ。生き返らせる事、死なせる事が出来ないだけであって、延ばす事くらい容易いんだよー」

言霊と言っても便利じゃないんだよーとおちゃらけた風に言ってみれば鴆は小さく笑って、それが出来たら神だな、と言いながら立ち上がった

「茶が残り少ねぇーから入れてくるわ」

「私も手伝うよ」

「すまねぇーな。助かるぜ」

ゆったりと喋りながら台所に足を運んで茶葉が入った缶を開けた鴆が小さく舌打ちをするのが聞こえる

「茶葉がねぇな」

「ありゃー…困ったね」

蛇太夫に頼むか、と台所を出て廊下に出た鴆が声を張り上げて口を開いた

「蛇太夫よぉ。ちょっと買い出しを…ん?」

「ねぇねぇ、さっきから誰も居なくない?」

「ホントだな」

「しかも熱くない?」

「ホントだな。喉がかわいたぜ──」

そう言った鴆の言葉を被せるようにパチ、パチと何かが燃える音が耳に入り、まさか、と振り向けば

「っ!」

「な、燃えてる!?」

ゴォオオと音を立てて燃え盛る母屋。それを立ち尽くしたまま見つめていた私たちの後ろから無慈悲にも冷たい声がかかった






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