言の葉あ遊戯、
□05
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ふわりと舞う桜の花びらに首を傾けた。春は過ぎたのに桜が舞うなんておかしい、と思ったが考えられるのは、一つしかない
「あ、いた…リクオ君」
「──琴美?…お前さん、また来たのかい?」
大きな枝垂れ桜の太い枝に居座るその人物は夜の姿のリクオ君だ。この世界はリクオ君の世界だから何でもありの世界。現に私も言霊の姿になっている
「またって言われても、寝たら此処にいるんだからしょうがないよ」
「最近寝てばっかじゃないかい。1時間前に帰っていったばっかだろ」
「私、今風邪引いてるから寝たきりなの」
両手を広げてリクオ君を見上げれば、軽やかに地面に降り立ったリクオ君は私を軽々と抱き上げて、枝垂れ桜の枝に飛び乗った。ストンと彼の膝の上に下ろされて足をプラプラと揺らせば片方の草履が重力に従ってすっ飛んでいってしまう
「あー。ダイナミックジャンプしていった」
「……馬鹿だろ」
「不可抗力だよー」
クスクス笑えばリクオ君も喉を鳴らせながら、私の頭を撫でる
「風邪、大丈夫なのかい?」
「うん。明日には学校に行けるってさ。一応、夕方から薬師一派に行って薬を貰いに行くみたい」
「なら良かった」
髪を一束すくい上げ、チュッとキスをしたリクオ君に微苦笑してその手を握った
「だんだん、キザになってきたね。おじちゃんに似てきたよ」
「うるせぇ」
「、ん」
クイッと顎を取られて上を向かされる。近づいてくる顔に私はゆっくりと瞳を閉じて彼を受け入れた。唇に少し冷たくて柔らかいそれが当たり、続いて舌が滑り込んでくる。漏れる吐息にリクオ君がクスリと笑った気配が感じ取られた
「…可愛い」
「はっ…ん、ぁう…」
「…ん…もうすぐ、そっちでも会える」
リップ音と共に離れていくリクオ君の顔に私は頭上に?マークを浮かべて意味が分からないと言った風に眉を寄せる
「意味が分からない」
「すぐ分かるさ」
口端を上げたリクオ君は私の頭に何かをつけた。なんだ、と触ってみれば何かを象っている髪飾りの感触
「やっぱりお前には、桜が似合うな」
桜をこよなく愛する彼らしい贈り物だと笑った私はありがとうと言えば、リクオ君はまた笑って私の額にピンっとデコピンをした
「ほら、もう時間だよ」
あー、そう言えば意識が引っ張られる感覚が先程からあったな、と重くなる瞼に力を入れながらリクオ君の頬にチュッとキスをして微笑んだ
「またね、リクオ君」
意識が暗闇へと落ちる瞬間、リクオ君が何かを言った気がしたが空耳かなと瞳を瞑った
「可愛いことしてくれるじゃあねぇーか」
***
ペチ、と額に何か当たる感覚がして意識が一気に浮上する。ゆっくりと瞳を開けて隣を見れば真っ白な物体がいた