言の葉あ遊戯、

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起立、礼、さようなら。の三拍子でランドセルを素早く背負った琴美は友達に眠たげな瞳を向け、ふにゃりと笑いながらバイバイと手を振り、教室を出た

「ねぇー、焔乃」

─何だい?─

「今日の夜ご飯はなにかなぁ?」

─そうだねぇ。肉じゃがなんて、どうだい?─

「うん、おいしそう」

─ふふ。主様の為に腕によりをかけて作るよ─

「ふぁあ…うん、楽しみにしてるよ」

お気に入りのスニーカーに履き替えた琴美は校舎を後にして、学校前にあるバス停へと足を運ぶ

─ん…おや。今日はリクオ殿は待たなくて良いのかえ?─

「なんかねぇ、琴美ちゃんに迷惑かけちゃうから、ちょっとの間一緒に帰らないだって」

─じゃあ、寂しいね─

「うん。でも焔乃が居るからそんなにだよ」

備え付けられた手摺に捕まりながらバスの中へと足を運べば運転手のおじさんが琴美を見てニッコリと笑って口を開いた

「こんにちは、琴美ちゃん。今日も一番乗りだよ」

「こんにちは、おじちゃん」

ペコリとお辞儀をして一番後ろの4人掛け席の左側に座りランドセルを膝の上に置く。その席はすでに琴美の指定席と化している場所だ。くわっと欠伸をすれば携帯についている勾玉型のキーホルダーがふわりと揺れた

─ついたら起こしてあげよう。それまで仮眠を取ると良い─

「…うん。そーする」


勾玉を一撫でした琴美は小さくお休みと呟くと窓に持たれかかりゆっくりと瞳を閉じる。勾玉は、─名を焔乃と言う─おやすみなさい、と返事を返して窓から外を見上げた。おや、あれは…と正門付近に佇む少年に焔乃の内心首を傾ける


「もう!なにめそめそしてんの!」

「…いてて」

ドンッと頭と背中を強く押されて転んだ少年、奴良リクオは頭を抑えながら攻撃してきた張本人である家長カナをチラリと見て俯き、眉を垂れ下げた

「アレのがすと30分後だよ!あんなやつらほっときなって!乗ろ、琴美ちゃんも乗ってるし!」

「いーよ!」

声を荒げて話すリクオに焔乃は成る程、と頷きゆるりと瞳を閉じた。こんなご時世、妖怪を信じろだなんて無理な話。たしかに妖怪は居る。元に焔乃も妖怪であり、焔乃の主である琴美も、妖怪とは少し違うが、人成らざる者だ。世の中難しいと頷いていればガコンとバスが緩やかに発車した

─いやな空気だ─

何かが起こりそうな嫌な空気を感じ取った焔乃はボソリとそう呟き、スピスピと眠る琴美を見て溜息を吐き出す。のんきなお姫様だ、と小さく笑った途端、ガタリと飛び起きた琴美は「おじちゃん、降りますー!」とランドセルを背負いながら言った

「琴美ちゃん?どうしたの?」

「学校に忘れ物しちゃったの思い出したの。じゃあまた明日ね」

バイバイと手を降ってバスを降りていった琴美にカナや他の友達も手を振り返した




111027 りん汰

 

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