言の葉あ遊戯、

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「ぶぇっ、くしょい!」

ガタガタと震えが止まらない私を見かねた焔乃が温かい柚子茶を出してくれた。それを一口飲んで、ホッと一息つく

「あー…温かい」

「ずぶ濡れになれば、風邪を引いてしまうのは分かっていたでしょう」

「いやぁ。まだまだ若いからさぁ、貸してあげたんだけど失敗だね」

あれどうやって返して貰おうか。と焔乃に聞けば、考えいなかったのですか!?と怒られた。叫ぶな頭に響く

「あぁ、主様!千羽殿と契りを結ばれたのだから、彼にお願いしてみては如何ですかえ?」

千羽とはあの事件の後、直ぐに契りを結んだ。契りと言っても、杯を交わす普通のと一緒だが。

五分五分にしようか?ときいたら、七分三分が良いと言ってきたのでそれになった。

助けていただいた身、小生はどこまでもついて行きます。と言った彼に軽く吹いたのは内緒だ


それより、土地神と杯交わして良かったのかなぁ、と思ったがまぁ良いか。全て終わったら事の経緯をおじちゃんに話してお許しをもらおう。うん、そうしよう。

行く行くは土地神たちを従えた如月組勃発なるかなぁ、とあははと笑えば焔乃が半泣きになりながら私を布団へと寝かせた。私は至って正常だ馬鹿やろう

(…千羽、聞こえる?)

言霊だけが、契りを結んだ相手を呼び寄せることが可能なのでなんか特した気分だ。契りを結んだ相手の脳内に意識すれば直接言の葉を届けることが出来る。

ただ唯一、焔乃だけがそれに当てはまらないのは不思議でしかない。何故だか彼には私の言の葉が届かないみたいだ。世の中不思議だらけだなぁ

(言姫様…どうかなされたのか?)

帰ってきた返事に笑みを零す

(いやぁ、それがさぁ。昨日のおばあちゃんに羽織りを貸したんだけど、どうやって取りに行くか悩んでるんだぁ)

(あぁ。それなら今小生がそちらに届けている最中ですよ)

「マジで?」

「はい?」

思わず口から出た言葉に焔乃が素早く反応した。苦笑を零しながら何もないよと言えば何となく理解したのか焔乃の口端がおかしそうに弧を描く


(場所、分かるー?)

(えぇ。言姫様の微かな力を辿っていますから大丈夫かと)

(そっか。助かるよ)

おやすいご用です。そう返した千羽にクスクス笑いながら起き上がった

「焔乃、千羽が今届けてくれてるって」

「良かったですね、主様」

うん。と頷きながら隣を見れば未だ昏睡状態の狒々様が目に入る。ぜんっぜん、目を覚まさない狒々様。頭殴れば起きるかな?と考えたがすぐさま消した

「そろそろ、包帯を変えないとねぇ」

よいしょと立ち上がり、怠くて熱い体に自分の手を翳す。スゥッと消えたその症状にこう言う時って言霊万歳だなぁ!と内心1人で喜んでいたら社の鳥居から気配が複数

「きたきた、」

振り向けば、巨大な折り鶴の背に乗ってきたのだろう、千羽が鎮座していた。その手にはおばあちゃんに貸した羽織りがある

「お邪魔します」

「千羽殿、わざわざ、ありがとうございます」

それを受け取った焔乃は深々と腰を曲げた。いえいえ、と手を振る千羽

「ひばり殿のお孫さんのご学友の方が持ってこられて、ありがとうと言っておりました」

「良かったね、千羽」

嬉しそうに話す千羽に私も嬉しくて焔乃と共に笑みを浮かべる

「いえ、言姫様にもですよ。ありがとう、言霊様と」

「!…そっかぁ」

「えぇ。…とても暖かい想いでした」

口元を緩めて笑う千羽の気持ちを表すかのように周りの小さな折り鶴たちがパタパタと揺れた




120305 りん汰

 

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