言の葉あ遊戯、

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「焔乃!いる!?」

「主様、こちらです」

ドタドタと社へと入れば狒々様の隣に鎮座する焔乃を見つけた。良かった、狒々様も変わりない

「いなくなるからビックリしたよー」

「申し訳ございません。狒々様の事を思いだして戻るとお声をかけようとしたのですが、もう主様が見あたらなくて」

すまん。心で謝罪しながら、ゆっくりと座布団に座って狒々様の額にある濡れタオルを取る。横に置いてある桶には水が入っており、タオルを浸して少し冷やし、絞ってまた額に置いた

「脈も大分戻ってる。後は意識さえ戻れば…」

「傷が深かったので、意識回復はまだまだ先かと」

だよねぇ。と溜息をつく。まずは安心だ。とりあえず、今考えなければならないのは、民間人。見逃していたとは言え、これから先の事は防げる


が、誰を狙うか分からない。神通力をずっと使って視てれば問題ないが、それでは私の体が保たないし

「幸先不安だ」

「如何なさいます?」

「しょうがない。パトロールでもするかぁ」


誰を狙うか分からない。民間人、それもクラスメートともなれば、30人はいる。それに幼なじみなども入れれば…ねぇ

まぁ、狙われそうな人数を絞るとしたらリクオ君も入っている清十字怪奇探偵団のメンバーとか、高確率そうだ。現に幼なじみであり清十字怪奇探偵団のメンバーであるカナちゃんが狙われそうだった。彼女に目的はなくリクオ君に用があったとしても、被害はあったのだから

「パトロールは宜しいのですが…リクオ殿たちに居場所などがバレてしまいますえ」

「…しょうがない。多少の危険は承知の上」

それでもやらなければ、危険を回避できない

「あまりご無理はなさらないで下さいね、主様」

「分かってるよー」

ふんわり笑えば焔乃も控えめに口端を上げる。笑顔が一番だな、焔乃は











***


「……………」

一呼吸して夜の姿を意識しながら自分の潜在能力をゆっくりと呼び起こす。反応するかのように髪の色が変わり、服が制服から着物へと変わった

毎回思うが、どういった仕組みなのだろう。服が着物へと変わるのが果てしなく疑問だ。言霊だから成し得る早業なのか?いや早業以前の問題だな

「よし、」

言の葉の技はもう安定して駆使できる。今だって思い通りに物が浮いたり沈んだりして自由にコントロールできているし

後は神通力さえ自由に駆使できれば私も言霊の術者としは一人前だ。言霊として半人前だが、それは気にしない

「………ふぅ」

気持ちを静めて、リラックス。今、視たいのは今現在。一足先の未来ではなく現実だ。頭で言い聞かせて、ゆっくりと目を開ける

「……っ。…ノイズが激しいなぁ」

空から街を見下ろしているみたいに視える景色は浮世絵町。あれ、パトロールしなくてもここから視れば良くね?と思ったが長時間は無理みたいだ、意識して視るのは結構キツいな。無意識はいきなりすぎて吃驚するけど、慣れれば差ほど疲れない

ザザザッとはしるノイズで視えにくい。パッと視は大丈夫そうだ、と東へと視点を移動すれば病院が視えた。その敷地内、病院の外には懐中電灯を持った巻ちゃんに夏実ちゃんがいる。何、しているんだろう


─鳥居、あった?─


─うん……この先みたいだよ─


「…………」

何か、嫌な予感がする。夜だし、妖怪の時間だし。何より…

(視てるだけなのにそこから微かな妖気がする…多分、いや絶対危ない)

フッと視るのを止めればフワリと景色は消える。隣に控えていた焔乃をチラリと見て私は踵を返した


「行くよ、焔乃。浮世絵総合病院だよ」

「御心のままに、主様」



120305 りん汰

 

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