言の葉あ遊戯、
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「なんで、」
カナちゃんの怯えきった声に後ろを振り向けばリクオ君の腕と腰あたりに出来た隙間からこちらを見ているカナちゃんが見えた
「何よ、アレ……い、今まで、あんなの…いなかったのに」
「いなかった?」
何の話しだと、また前を見て納得
「あれが、七人同行」
“隙間”から見ているから、人間にも見えたのか…
「四国八十八鬼夜行というのも名ばかりじゃないんだねぇ」
面倒な者を呼び寄せたなぁ。と頭をガジガシとかけば肩をグイッと引っ張られた
「…え、」
と思いきや、リクオ君に抱きしめられているではないか。どーゆー状況?
「心配した…連絡もないし…疲れきった顔してるし、」
小さな声でボソボソと喋るリクオ君は泣きそうな声だった。心配されたのか、そりゃそうか
でも、そう言うって事はまだあれを読んでいないのか…困ったな
「うん、ごめん」
「ボクこそ…ごめん」
……何が?
………あぁ浮気のことかな、うん、浮気のことだな。すっかり忘れてたよ
「琴美様ぁ!じんばいじでだんでずよぉ!」
「何が何だがさっぱりなんだけど、何となく分かった。心配かけてゴメンねぇ、氷麗ちゃん」
「びっ、ひざまも、亡くなられて敵勢力が攻めてぎでるんでずーっ!琴美様に何かあっだからわだじー!うぅっ」
びっひざま?……びっひザマァか?…いや違うな。
びっひ、
ひっひ、
ひひ、
…………。
狒々か
…………狒々?
狒々!?
「あ、…あぁあ!」
「どうしたの!琴美!?」
狒々様をほったらかして出てきてしまった…大丈夫なの、か。いや、決死の思いで治療をしたから少し目を離しても大丈夫か…
いやいやいや!そう言う慢心が死を招くんだぞ私!……駄目じゃん!?
「…いや、何でもないよー」
「ほんと?」
「ウン。ホントー」
引き笑いしか出てこないぞ。焔乃、お前、いったいどこに行ったんだ。ちょっと前まで私についてきたよねぇ。あれ、いつからいないの?もしかしてはぐれたの?やだ、笑えない
「琴美様が無事で何よりです!ささ、帰りましょう!」
「うん、そうだね。いこ、琴美」
手を差し伸べるリクオ君に苦笑しながら首を横に振る
「ごめんね、まだ帰れないやぁ」
「………え?」
「成すべき事がまだ残っているから」
「なん、で」
分からない、と言った風な顔をするリクオ君のずっと後ろで息を呑む声が聞こえた。首無たちだ、多分リクオ君の護衛だろう
「まだ、ハッキリとは言えない」
「怯えてるような、泣きそうな顔も疲れきっているのも…その成すべき事の、所為なの?」
私はそんな顔をしていたのか。半ば驚きながら曖昧な返事をして、リクオ君をジッと見つめた
「ねぇ、リクオ君。大事な物はただ持っているだけじゃ駄目なんだよー」
「……大事な物?」
じゃあ、バイバイ。手を振ってリクオ君の横を通り過ぎる。カナちゃんが心配そうな顔をして私を見ていたのでふにゃりと笑えば幾分がそれが和らいだ
「今ちょっと家の用事で学校に行けないから、私が居ない間のノート、頼んで良い?」
「え、うん。任せて!」
「ありがとねぇ、カナちゃん。バイバーイ」
歩きながら手を振ればカナちゃんは笑顔で返してくれた。やっぱり美人は笑顔が似合うなぁ
複雑そうな顔で私見ているであろう氷麗ちゃんと青田坊には申し訳ないが今はホント何も言えないから、ごめんね
「これから、リクオ君も幹部も狙われるかもしれないから…気をつけてね?私は私が出来る事をするから」
「え?……あ、はい」
首無たちの横を通り過ぎる時に声をかければ困惑しながらも返してくれた。そうだ、出来ることをするんだ
120208 りん汰