言の葉あ遊戯、
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「っは、は…」
「主様っ、主様!お気を確かにっ!」
視える。視えてくる、未来が…
─あ。すいませーん、もうすぐ夜明けなんで…閉店っすー─
─っ!?…、がっ!がはっ!─
─三郎猫っ!?─
やだ、なにこれ。なんで、死んだ、の……あんなに苦しんで、…まさか、毒…?
─う…う、…わ、ワシを誰だと思うとる…─
「ぃや、…い、や…っ!や、やめて」
─ザコはザコじゃ─
─ぐっ、ガグゥウウ!─
また死んだ…狒々様が…あの狒々様がっ…い、いやっ!
視たくない視たくない視たくない視たくない!
止めてっ、もういい。
視せないでっ!
─っあ…、が、…し、ょえ…い……─
「っは、…もう止めてっ!視せないで!視たくないっ、いやぁっ!」
─こりゃ、一週間もかかんねーんじゃね?─
─奴良組は今もろい─
─奴良組の総大将、ぬらりひょんは…─
─四国八十八鬼夜行が、殺るよ─
「主様っ!ご自分を見失ってはなりませぬ!」
「っは、は…ぁ、あ…あっ、」
ギュッと焔乃の袖口を握りしめば焔乃はうっすらと笑ってみせながら私の瞳を真っすぐ見てきた
「大丈夫です、焔乃は此処にいます。…主様のお名前は?」
「──如月…、私は…言霊の如月琴美…」
「主様、そのまま、ゆっくり深呼吸です」
ポンポンと私の背中を撫でる焔乃に荒い息だった私は言われる通りに深く、ゆっくり息を吸って、吐いた
「も、大丈夫…大丈夫」
「立てますかえ?」
焔乃の手を借りながら立ち上がった私は青ざめた顔のまま、玉章たちが去った方角を見据える。確かに視えた未来には玉章たちと他の妖怪もいた。畏を従えると言う事とはそう言うことだったのか。おじちゃんを殺して畏を集める。その為に化猫組や狒々様や他のみんなを殺ったのか
「…許せない、なぁ」
沸々と湧き上がる怒りに手を握り締めた。視たくもない最悪な未来を視てしまって気分は最悪だし震えは止まらない。それに、そうなってしまうと思うと凄く怖い。でも少なからず私は知っている。なら、
「私が、頑張って止めないと…」
私が頑張れば良いんだ。
さっきの神通力で能力の開花も少しだけ安定してきた。この調子なら言の葉も神通力も安定するだろう。
視たくない未来だったけど、それでみんなが生きられるなら、笑い合えるなら、幸せになれるなら─
「──いくらだって視てやるんだから」
「主様?」
「焔乃、緊急事態だよー」
いつもの調子でヘラリと笑えば焔乃は真剣な顔付きで頭を垂れた
「何なりと、主様」
「焔乃は一旦家に戻って神楽を持ってきてねぇ。みんなにバレないように、内密に。神楽を持ち出したら薬鴆堂で薬一式…──いや、解毒剤と傷薬を貰ってきて。理由を聞かれても答えちゃ駄目だよー。命令だからって言ってねぇ?」
「御心のままに、主様」
「待ち合わせ場所は、化け猫横丁。事態は急を要するよ」
ザッと風のように消えた焔乃。私は少しだけ空を見上げて胸元で両手を組んだ。少しの間、リクオ君とは会えないな。一応、私も狙われてるみたいだし、奴良組の為にも一緒にいない方が良い。神通力で視た未来を変える為に、内密に行動しないと……玉章にバレる、よね。厄介ごとは増やさないに限るよね、うん
「大丈夫、私なら出来るよ」
みんなを守るんだ。その声は玉章の畏に当てられたからなのか、もしくは最悪な未来を視てしまった所為か、震えていた
111229 りん汰