言の葉あ遊戯、

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「っ、は…は、はっ!」

ダンダンッとデカい足音を鳴らせながら階段を上っていく。いつもは短い廊下もこの時だけは何故だか長く感じられた

「──ゲホッ…は、っゴホ!」

むせかえる咳に思わず立ち止まり膝に手をつきながらスゥッと大きく息を吸って吐き出す。ガンガンと鈍器で殴られているような頭痛がしてきた。能力の開花で神通力が不安定だから体が悲鳴を上げているのだろう。思わず視えた未来に体力も凄く消耗されている……って、あれは未来、だったのか

「いや違う…あれは未来なんかじゃ、ない」

あんなにリアルで視えた映像は未来でもなんでもない。その時起きていた事だ。確信なんて何もないがそう思えて仕方がない。まるでその場にいるような視点で、いつもとは違う感じの視え方だった。
神通力の未来視はその光景が視えるのだが空から見たようなそんな感じで視える。その場にいるような視え方はしないのだ。違和感に不安が募るがこれも私の力なんだ、だったら何があっても止めないと

「──考えてる場合じゃない」

そうだ、理科室に急がないと、とようやっと整った呼吸にもう一度深呼吸して廊下を駆け抜けた








***

「あ…ごめん清継くん…大丈夫、全然大丈夫よ。妖怪じゃなかった」

見えてきた理科室に走りを止めて、静かに扉に近寄ればカナちゃんのそんな声が聞こえてくる

《えー?本当か…?うたがわしいなァ─》

チラリと扉の隙間から中を窺えば気味が悪い人形に話しかけているカナちゃんと、そんなカナちゃんを横抱きにしている夜の姿のリクオ君が視界に入り、思わず見るのを止めて壁にズルズルと滑りながら座り込んだ

(なんで…リクオ君がいるの?……なんで、カナちゃんを抱っこしてるの…?)



「あの!あなたって…っ、ひゃっ!?」

小さな悲鳴が聞こえてまた見てみれば窓から外に出ていくリクオ君の後ろ姿とリクオ君に抱きつくカナちゃんが見えて口元を押さえる

「……………」

ズキズキと痛む胸と泣きそうになる思考回路。胸なんて怪我してないのになぁ、と乾いた私の笑みが真っ暗な廊下に反響する。分かってるよ、これが嫉妬だって事ぐらい

「……私って…結構、嫉妬深いんだ、なぁ」

これぐらいで泣いちゃうなんて、と自然と溢れ出る涙に顔を膝に埋めた。ぐちゃくちゃでおかしくなりそうな頭にさっきの2人が出てきて頭を左右に振る。リクオ君はカナちゃんを助けて、夜も遅いからお家に送るだけなんだ。と誰に言うでもなくそう言い聞かせて頬を伝う涙を手でゴシゴシと拭き取った。やる事なんて沢山ある。神楽を扱えるように訓練する事、能力の開花で安定しない言の葉と神通力を自分のモノにする事、それに加えて今決めた嫉妬深さを治す事が仲間入りだ。先はまだまだ長いぞ私

「もぅ、本当…踏んだり蹴ったりだなぁ」

そう言ってゆっくりと立ち上がった私に、また朝のような悪寒が走った







111211 りん汰

 

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