言の葉あ遊戯、

□07
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肩をクイッと寄せられ、後ろへと押された

「……え?」

驚く私の前には夜の姿へと変化を遂げたリクオ君の後ろ姿。祢々切丸を鞘から抜いたリクオ君は目の前まで迫っていた蛇太夫の口元に真横に刃をたて、勢いを殺さず一気に真っ二つに切り裂いた。血飛沫を上げながら倒れる蛇太夫だったソレに私は気持ち悪さからウッと胃が咽せ返り思わず口元に手を当てる。必死になりすぎて気に留めなかったが、私は鴆を裏切った妖怪といえども生きた者を刺して殺したんだと、今更気づいたその感覚にガタガタと恐怖と入り混じって震えた。私の変化に気づいた鴆が背中を優しくさすってくれる

「退けーっ!」

「うわぁあぁああ!」

蛇太夫の仲間たちはその圧倒的な強さに畏れをなし、尻尾を撒いて逃げていった

「物騒なモン持ってんじゃねぇよ。危ねぇだろ」

クルリと振り返ったリクオ君が私の手を見て眉を寄せた後、握っていた刀を奪いとって投げ捨てた

「…あ、…ごめ…な、さ……っ」

「怖かったよな。もう大丈夫だ」

自身が肩にかけていた羽織を私にかけながらリクオ君がギュッと私を抱きしめる。その優しい手つきに、暖かさに自然と震えが止まり、代わりと言わんばかりに涙が溢れた

「ふ、っ…こ、こわ…かった…ひくっ、」

「約束する。もう絶対危ない目には合わせねぇ」

グイッと私を抱き上げたリクオ君は涙を流す私の目尻に唇を一つ落とす。それに吃驚した所為で涙が止まってしまった

「……あんた、誰だよ?」

「リクオ様、また…覚醒されたのですか…」

鴉の言葉に鴆は驚いたようにリクオ?と呟き、リクオを凝視する

「よう、鴆。この姿で会うのは初めてだな」

口端を上げて笑ったリクオ君はこうなる経緯を簡略に話しながら私の頬についた返り血やら煤やらを親指の腹で拭いとっていた

「──なるほど…四分の一は妖怪だってーのか」

「あぁ」

「なっさけねぇ。こっちはれっきとした妖怪だってのに……結局、足手まといになっちまってる…琴美も怖い思いをさせちまって悪かった──ゴホ、ゴホッ」

グリグリと私の頬を擦るリクオ君は咳き込んだ鴆をチラリと見る。目があったのかリクオ君と鴆は見つめ合ったままピクリとも動かない

「なぁリクオ。今のオメエなら…継げんじゃねぇのか?三代目」

「…………」

「オレが死ぬ前に…晴れ姿見せちゃあくれねぇか」

鴆のその言葉にリクオ君は懐から妖銘酒を取り出し鴆に見えるようにちらつかせた

「飲むかい」

「いいねぇ……オレに、酒をついでくれんのかい?……ついでに、あんたの盃もくれよ」

「…………」

「オレは正式にあんたの下僕になりてぇ!アンタと、本当の義兄弟にさせてくれ。親の代じゃねぇ…直接あんたから」

私を地面に下ろしたリクオ君が隣に胡座をかいて座り込んだ

「いいぜ…鴆は弱ぇ妖怪だかんな。オレが守ってやるよ」

「ハハハッ…はっきり言うな、夜のリクオは」

二つの赤い盃を鴉が素早く出した。ん、と渡された妖銘酒にあぁ、酌しろってこと?と納得した私はその二つの盃にゆっくりと義兄弟になる為のお酒を注ぎこんだ





111028 りん汰

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