雨色リズム
□失雨
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あの日から、雨が十二回通り過ぎた。夕立も入れて。
ここまで細かく数えている私もどうかと思うが、この雨の間私は一度も彼の所には行っていない。いつの間にか、梅雨も明けていた。
彼の所に行かない代わりに、私は必死でクラスに溶け込もうとしていた。
とにかくそんなことでもしていないと、彼のことを思い出しそうで怖かった。思い出してしまうと、生きているのが嫌になるくらい辛くなるから。
私が関わっていけば、クラスメート達は優しくしてくれた。話し方はまだぎこちないかもしれないけれど、前よりはマシになったはずだ。
昼休みには、前に話し掛けてくれた女の子と一緒にご飯を食べて、話をした。彼女は明るくて、隣に居るだけで笑顔になれる。
今はまだ無理矢理に作っている笑顔も、時間さえ経てば自然になってくるかもしれない。
彼の所に行きたくない訳じゃない。会って、話をしたいとも思う。
でも、どうしても足が向かない。
怖い、怖くて仕方ない。私にとってあの場所が大切だから。失ってしまったら、彼に、拒絶されてしまったら。そんなことを考えるだけで、涙が出そうになる。
それでも、学校では常に明るくいようと努めた。自分を偽ることになるかもしれないが、それが今の私には唯一の救いだった。
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