雨色リズム

□雨傘
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今日、私は珍しく家に帰らなかった。

どうせ家に帰っても誰もいないのだから居てもいなくても関係ない。
そんな考えが頭を過ぎったからだ。


しかし―


「やっぱ帰れば良かったかな……」


雨が降り出してきた。







適当なところで雨宿りをしようと辺りを見回すと、不思議な程誰も居ない。


…いや、訂正、居た。


真っ白の髪が綺麗に雨に溶けていて、瞳は紫色、その佇まいは儚げそのもの。
そんな不思議な人が、私から少し離れたところに一人で立っていた。


「あ……」


何か言おうとしたが、言葉が出てこない。


「あ、あの……」


小声で何とか言葉を紡ぎだそうとしてみるが、やはり言葉は何も出てこない。


その間にも、その人はこちらに近づいてくる。





「あの、その、…えーっと……」


そうやってタジタジしている内に、その人は私の目の前に来ていた。





そして、私に傘を差し出した。


「濡れてるよ」


その人はフッと笑った。


それで我に帰った私は、慌てて傘の受け取りを拒否した。


「い、いえ!結構です!見ず知らずの方にそんなことして頂く訳にいきませんから!!」


これは本当だ。
大体、借りたって返せるあてもない。


「でも濡れてるじゃないか」
「ほ、本当に大丈夫なんです!余裕です!」


私はぶんぶんと頭を振った。
しかし、雨はますます強くなる一方で、私の言葉には説得力がまるでない。




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