振り夢

□約束
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最近、あいつの調子がおかしい。


 今日だって、一緒に帰れるっていうのに いつもと様子が違う。


 なんと言うか・・・疲れてる? 無理してる?


 とにかく、表情が微かに曇ってる


 すっきりと晴れない、今すぐにでも雨が降りそう



 まさに今の天気、降水確率80%




「・・・隆也」



「あ!? ・・・何?」



 急に話しかけられて、少し驚いた



「隆也は・・・毎日こんな時間まで野球やってさ・・・」



「ん」



「野球、好き?」



「好きじゃなきゃ こんなにやんねーだろ」



「あっ、だ、だよねッ・・・」



 やっぱりいつもと様子が違う



「お前・・・今日、変じゃね?」



「へ、変じゃないよ!」



「そうか?」



「・・・・」



「・・・・?」



「こーしえん・・・・」



「は? 甲子園がどうかした?」



「目指すんだよね、甲子園」



「ん? ・・・まぁそーだな 何で?」



「そう・・・だよね・・・」



 そう言いながらうつむいたあいつの目に、涙が浮かぶ



「?・・・って何でお前泣いてんだよ!」



「へ?・・・泣いて、ない、よ・・」



 嘘だ なんでそーやって隠そうとするんだよ



「なんかあったか? それとも俺、なんかしたか?」



「ううん、何でもない・・・ホントに大丈夫」


 
 そーゆー無理につくった笑顔やめろよ

 俺が好きなのはそんなお前じゃない



「あのさ」


 俺は 言うのと同時に立ち止まる

 あいつの方を向いて、手を握る


「お前には何でもなくても、俺は気になる
 
      今日のお前 明らかおかしいだろ」



「・・・・・」




「んで・・・傷付くってゆーか・・・隠し事されてるみたいで、」


「・・・た・・・かやッ・・」



 またあいつの目から涙がこぼれる

 今度は真っ直ぐ俺のこと見てて・・・


 やべッ・・もらい泣きしそ・・・





「あのッ・・・ね・・・・」


 うん


「隆也が、・・・遠くに、ね」



 俺、が・ ・ ・



「電話したり、ご飯食べたり、帰ったりしてる時も、


 こんなにいつも傍に居てくれてるのに・・・


 甲子園とかさ・・・凄く遠くて・・・」



 遠く ?



「野球やってる隆也は凄く遠く・・・遠くに行っちゃいそうで・・・不安で・・・」



 そーゆー・ ・ ・事か・・・




「・ ・ ・ 行かねーよ」



「っ隆也・・・」



「お前置いてなんて、どこも行かねー、行きたくねーしよ」



「・・・っ―――-・・」



「安心していいから、お前は、その・・・いつもみたいに笑ってればいいから」



「・・・うん・・・」



「・・・ずっと傍にいる、約束するから」



「・・・約束ね」


 
 涙を拭きながら あいつはそっと笑う

 そう、その笑顔でいろ、って言ってんだ



「・・・どうした?」


「ううん・・・なんかほっとした。隆也が言ってくれると 重みがある」


「ふーん・・・じゃあ、帰るぞ」




 手を握ったまま 歩き出す


 
 いつの間にか空はすっきりと晴れて 綺麗な青色をしていた







約束


握った手と手が永遠に離れませんように




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