創作本編

□第二章
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「そんな顔しないで。馬鹿にしたつもりはなかったの。」

はい、と彼女が手に抱えていた大量のお菓子の中からチョコレートを差し出す。

「イライラには糖分が一番よ。一つわけてあげる。」
「あ、ありがと・・・。」
「貴方、木下の息子でしょ?」

突然のカノからの質問。一瞬頭がついていかなかった成人だが、

「俺は木下成人。」

淡々と告げると、彼女はやっぱり、と呟いてまた笑った。

「色素の薄い髪とかそっくりだもの。」
「お前の言う木下って父さんのこと?」
「カノ。」
「はい?」
「私の名前。お前、って名前じゃないわ。」

ポスッとカノがソファーに腰かける。チョコレートの包みを開きながら、成人を見つめていた。

「・・・カノ、の言う木下って父さん?」
「そう。私とティアは研究施設にいるの。」
「じゃあ父さんがしている研究が何か知ってんの?」
「ええ。全部知ってるわ。」
「俺も知らないのに?」
「貴方が家族だからこそ言わないのよ。」

言わないというより言えないのかも、と言いながら立ち上がる。

「そろそろ行かなきゃ。木下が心配してるわ。」
「まだ聞きたいことあるんだけど。」
「お父様から直接聞きなさい。・・・じゃあまたね、成人君?」

ベランダからでる彼女。

「ちょ、玄関こっち・・・」

見に行った時には彼女はもういなかった。
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